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【特別ゲスト!青山学院駅伝部/原晋監督】『マイナビアスリートキャリア』イベント開催レポート ~選手の主体性を活かす指導法とは?~

みなさんは学生時代に、スポーツから何かを得た経験はありますか?
 
先生や指導者から、その後の人生の指針となるような指導を受けたという人もいるのではないでしょうか。かくいう私も高校球児として、暑い日も寒い日も白球を追いかける中で、忍耐力や礼節の大切さを学んできました。
 
ひと昔前のスポーツの指導法といえば、コーチや監督のトップダウン型の指導方法がメインとされてきましたが、最近のトレンドは選手の自主性や主体性を尊重した指導法に移り変わっています。
 
そんな指導法の変化を背景に、アスリートの就労支援を主な事業とする『マイナビアスリートキャリア』はトークセッション『いま話題の「選手の主体性」を活かす指導法は果たして正しいのか?社会で活躍できる人材育成のための指導者の在り方とは』を2023年10月に実施しました!
 
 
今回は特別ゲストに、青山学院大学駅伝部の原晋監督を招き、今後の指導者の在り方や、自主性や主体性を持って取り組んだスポーツ経験が社会での活躍にどのような影響を与えるのかについてお話しいただきました。
 
他にも、学校教育の視点からUNIVAS理事の伊坂忠夫さん、ITの視点からSPLYZA代表取締役の土井寛之さん、アスリートの就労の視点からマイナビアスリートキャリア事業部 事業部長の木村雅人が登壇し、それぞれの視点から3つのセッションに分けて意見を交わしています。
 
今回は、トークセッションの様子を会話形式でご紹介します!
 



【登壇者プロフィール】

青山学院大学駅伝部 監督 原晋 (はら・すすむ)
中学から陸上を始め、中京大学では3年時に日本インカレ5000mで3位入賞。卒業後は中国電力株式会社の陸上競技部に入部し、引退後は同社の営業部のサラリーマンに。2004年から青山学院大学陸上競技部監督に就任。着実に改革を進め、2015年から2018年大会まで箱根駅伝で4連覇を飾るなど、独自の指導法で陸上界を大きくけん引している。
 
 
一般社団法人大学スポーツ協会 理事/立命館学園副総長・立命館大学副学長/伊坂忠夫(いさか・ただお)
1992年立命館大学理工学部助教授就任。その後2010年にスポーツ健康科学部教授、2016年にスポーツ健康科学部長を経て、2019年に立命館学園副総長・立命館大学副学長に就任。主に、スポーツ活動中や日常生活でみられるヒトの動きを力学的・生理学的観点から解析し、競技力向上や日常活動支援へ応用することをテーマに活動。
 
株式会社SPLYZA 代表取締役 土井寛之(どい・ひろゆき)
元製造業ソフトウェアエンジニア。社会人になってからウィンドサーフィンに出会い単身オーストラリアへ。帰国後の2011年にSPLYZA創業。30種類以上のスポーツで約900チームに利用されている映像振り返りツール『SPLYZA Teams』などを開発。「スポーツの教育的価値の向上」を目指して会社を経営している。
 
株式会社マイナビ アスリートキャリア事業部 事業部長 木村雅人(きむら・まさと)
2004年に毎⽇コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社。
現在はアスリートキャリア事業部 事業部長として、「スポーツを通じた人材育成の可能性」をテーマにアスリートの「人材育成」と「就労支援」に関する事業を執行。

【セッション1】選手と指導者が向き合う!双方向型のコミュニケーションとは?

司会:2022年12月にマイナビアスリートキャリアとSPLYZAが実施した、「スポーツ経験と社会での活躍の相関性」に関する調査の結果から、指導方法により仕事への有効性や身に付く力に違いが出ることが分かりました。選手・指導者のどちらかに依存した指導環境ではなく双方向型であり、選手自身が考える機会が増えることで社会を生き抜く力の向上につながると考えられます。この結果について、皆さんのご意見をお聞かせください。
 
原晋(以下、原):まずはトップダウンで指導者が選手に指導をする「指導者君臨型」や環境づくりに奉仕・支援する「サーバント型」のどちらかがいいということはないと思います。そのうえで私自身も、君臨型からサーバント型のリーダーへ移行をしてきました。すると、徐々に選手自身が考え自ら行動できるような環境になってきたなと思います。

伊坂さん(左)、原さん(右)

伊坂忠夫(以下、伊坂):選手と監督がお互い向き合う「双方向型」の指導をしないと、探求型の学習はできません。そのためには指導者と学生がディスカッションできる環境が必要で、それを受け入れて行動できる指導者が今後増えてくるといいですね。

【セッション2】自主性を意識することで、選手のみならず指導者も共に成長できる!

司会:選手の主体性をこれまで以上に重要視した指導方法や練習方法が、8月に開催された高校野球の全国大会でも注目を集めました。多くのメディアで選手の主体性を尊重する指導環境がフォーカスされています。「指導者のあり方」に変化が必要だと言われている今の背景を踏まえ、選手の主体性を尊重した指導とはどのようなものになるのでしょうか?
 
伊坂:まずは大前提として心身ともに安全と安心の担保が必要です。その上で選手のみならず指導者も含めて、自らの成長を楽しみワクワクできるかが大切だと思います。選手は学業やその先のキャリアについて自ら選択できることが重要であり、指導者は選手の将来のキャリア像に寄り添い、コーディネートすることが求められています。

原:青学では目標管理ミーティングを定期的に開催しています。以前までは、選手ができなかったことに対して指導者や先輩が指導して終わり、という傾向が強かったのですが、最近は先を見据えて「これからどうすべきか」を追求していく「フィードフォワード式」に変化してきました。ただこれも、「フィードフォワードが良くてフィードバックがだめ」といったことではなく、使い分けるのが良いと思います。チーム全体からフィードバックすることで、指摘する側も成長できますからね。
 
土井寛之 (以下、土井):スポーツで活躍することも社会で活躍することも、どちらも正解は無いと思います。その上で大切なポイントは、課題を発見する力、解決する力、チームで推し進める力の3つの力を身に付けることです。私はITを活用してスポーツを支援する事業をしているので、その視点でお話をさせていただくと、昨今ITやテクノロジーを部活動に用いる学校も増えています。ただ、それらを部活動で活用すること自体が社会での活躍に直接つながるわけではなく、先ほどお話した「3つの力」を身に付けるためのあくまで「手段」だと思っています。ITツールを活用することで、トライ&エラーを多くでき、より早く解決策を見つけることができるようになります。


ITやテクノロジーの観点から語る土井さん

木村雅人(以下、木村):採用の観点でいうと、採用選考時に企業が重視する力は「主体性」や「実行力」、「傾聴力」と、長らく変わっていないんです。スポーツを通じて培っていくべき能力って長い目でみても自己実現のために必要なことで、社会に出る前から磨くことができます。指導者も意識して指導していくことが大事ですよね。

【セクション3】指導者は選手に何が提供できるのか。「選手自身が言語化する機会」をつくる!

司会:今、木村さんからお話があったように主体性のある人材は社会や企業でも求められているということが分かってきました。社会で求められるスキルや能力を身に付けるために、指導者が現場で必要なことや学生に対して提供できることは何があげられるでしょうか?

木村:今求められていることと、2050年に求められている能力には大きな変化があると予測されます。ただ、他者と協力できるという能力はこの先も求められ続けると思いますし、グローバル視点から見ても大切なことです。指導環境においては個人の能力を伸ばすことを意識した適切なマネジメントが重要です。

就職や雇用の観点から説明する木村

原:自主性と主体性を尊重した指導をするためには「選手自身が言語化する機会」を指導者が作るべきだと話しました。コミュニケーション能力を高めていくためにも会話を深くしていく必要があります。「展開力」「本質把握力」「提案力」の3つが大事です。話すスキルをつけることが大切ですし、これらの要素を持っておけば、様々な社会の課題を解決できる力になるはずです。
 
司会:選手・指導者のどちらかに依存した指導環境ではなく、選手と指導者が常に意見を交わすことで、選手自身の考える機会が増えていきます。そうすることで、スポーツで培った能力が社会で活きていると感じる人が増え、社会を生き抜く力の向上につながるということが分かるイベントになりましたね。ありがとうございました!
 
 
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様々な視点からお話を聞く中で、選手と指導者が双方向を向いた指導環境は社会を生き抜く力の向上につながることが分かりました。安全性が担保されたうえで、今後もスポーツ界がよりよい方向に発展をしていくことを願います!