開始半年で参加学生は20名以上。障がい学生が自分をもっと理解して自信につなげるための長期インターンシップ『Career Create Program』とは
皆さんは、日本の大学を卒業する学生の中に、❝障がいのある学生❞ が どれくらいいるのかをご存じですか?
厚労省の調査によると、大学を卒業する障がい学生は1年間に約6000名、そのうち卒業後に就職を希望する学生が約4000名。そこから実際に就職できる学生は約3000名ほどだと言われています。
大学生の就職率が98%以上である今の日本で、障がいのある学生の就職率は約50%。
そんな現状を「本気で変えたい。」と話すのは、株式会社マイナビパートナーズ※事業部長の守屋。
障がい者と企業の間にある「アンコンシャス・バイアス(=無意識な思い込み)」をなくし、多様性・公平性・包括性のある世界を本気でつくりたいと話す彼が、障がい学生のための長期インターンシップ『Career Create Program』にかける想い、そして日本の障がい者雇用において、マイナビがいまできることとは――。
多様性・公平性・包括性のある世界をつくりたい
僕は新卒でマイナビに入社してから、10年以上就職情報事業部という部署で新卒採用を行う法人への営業や、採用のコンサルティングなどをしていたのですが、毎年これだけの学生が就職している中で、障がいのある学生で就職できるのは約半数。じゃあ残りの半数の障がい学生って、どうしているのだろう?と疑問を抱いていました。
障がい学生にスポットをあてた職業紹介事業って日本ではまだあまり発展していなくて、特に精神障がいなど目に見えにくい障がいのある学生は、どういった配慮をすればいいのか分からず、企業の受け入れ体制が整っていないため、就職しにくいという課題があります。そんな問題を本気で解決したいと思ったんです。
あとは僕自身にも、聴覚障がいのある娘がいて、将来もし娘が就職活動をするなら、障がいがある・なしに関わらず全ての学生がいろんな選択肢にあふれている世の中にしていたいという個人的な想いもあって、マイナビ入社13年目にして、マイナビパートナーズへの出向を決めました。
出向後はDEIソリューション事業部を担当し、現在そこで事業部長を務めています。
DEIというのは「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」の略です。本気で多様性、公平性、包括性のある世界をつくるために「DEIソリューション事業部」という事業部名にしました。
いまDEIソリューション事業部で行っている事業は主に3つあります。
❶障がい者人材紹介事業 『マイナビパートナーズ紹介』
❷障がい者採用/雇用の法人向けコンサルティング事業
❸障がい学生育成事業「長期有給インターンシップ Career Create Program」(以下:キャリプロ)
なかでも、障がい学生育成事業は僕がかねてよりずっと実現したかったものでした。
数万という数の会社が新卒採用を行う今の日本で、障害者手帳を所持している学生の雇用を明確に打ち出しているのは300社程で、すごく少ないのが現状です。
もちろん企業が障がい学生の雇用を実現するまでにはさまざまな課題があると思うのですが、現状だと障がい学生は就職先を探すのが難しく、自分がどの会社を受けたらいいのか分からない。それ以前に、今の自分には一体なにがどこまでできて、どういうサポートが必要なのか、自分自身で理解しきれていない。そんな課題を解決する道標になればと、この事業を始めました。
アンコンシャス・バイアスを取り払って、お互いを理解する
僕がいつもメンバーに話していることなんですが、企業側も学生側も、お互いに対して必ず何かしら思い込みを持っていると思っています。
これは障がいの有無に関わらずですが、学生は「この業界はこうだから、きっと自分にはハードルが高いだろうな…」とか、企業側も「さすがに学生にここまではできないだろうな」とか、自分の今までの経験や見聞きしたことに照らし合わせて、自分なりに解釈してしまう。
そのような、『アンコンシャス・バイアス(=無意識な思い込み)』が必ず存在していると思っていて、だからこそ、お互いを理解し合うということが一番重要だと思います。
そういった企業と障がい学生の間の壁を越えていくために、Career Create Program(キャリプロ)があります。プログラム内容はいろいろな案があったんですが、1年という長期で学生の様子を見たかったのと、本人たちに働くことの責任やプロ意識のようなものを感じてほしくて、長期の有給インターンにしています。
有給だけどアルバイトではなくインターンという形にしたのは、学生にしっかりとフィードバックをしてあげたかったからです。キャリプロでは学生ひとりに対して専属のチューターがついて、1日の終わりには必ず振り返りをしています。
例えば、「あのときこういう確認ができていればミスが防げたんじゃないか」とか、「あの人にはこういう伝え方もあったんじゃないか」とか、業務効率的なことから社会人としての立ち振る舞いまで、細かく伝えています。障がいのある彼らに実体験を通して自信をつけさせてあげたかったんですよね。
自分の障がいを理解する
キャリプロでは、自分の障がいを理解するという目的も設定しています。
障がいは同じ診断名であったとしても人によって全く症状や特性は異なります。「同じ障がいがあるマイナビパートナーズの社員の中にはこういう配慮が必要な人もいて、あなたの場合はどうかな?」みたいなことを話していると、自分でも気が付かなかったことが見えたりします。
自分にとって必要な配慮事項を説明する力をつけてあげることで、障がい学生にとっても、採用する企業側にとっても、ひとつの安心材料になればいいなと思います。
あとは、インターン中に障がい学生のキャリアの相談にも乗ることができます。DEIソリューション事業部では、障がい者の人材紹介事業も行っていて、そこに所属するキャリアアドバイザーの中には自らも障がいのある社員がいるので、障がい者としての就活という目線で相談に乗ることもできます。また、障がい者人材紹介の法人営業を行う社員が業界研究の講座を開いたりするので、業界の理解を深めることもできます。
「配慮はするけど遠慮はしない」距離の取り方
2024年2月にキャリプロが発足して、参加学生は半年で20人を超えました。これからさらに増える予定です。ただ、まだ課題もたくさんあります。
学生たちはみんな本当によく働いてくれていると思いますが、例えば遅刻ひとつにしても、連絡すれば遅刻していいってもんじゃないですよね。そのような社会人としての常識みたいな部分をどう伝えるのか、ひとつの事象を正しく本人に受け止めてもらうにはどうするのが正解なのかという、こちら側のマネジメントの難しさは感じています。
ただ、前提としてマイナビパートナーズは❝配慮はするけど遠慮はしない❞という考え方で、「それって違うんじゃない?」ということは、しっかり伝えるようにしています。
実際のインターン生たちからは、「実務経験が積めてありがたい」と言われることが多いですね。あとは、「このインターンに参加して初めて自分の得意・不得意が分かって、仕事を通じて自己理解への幅が広がった」と言ってもらえています。
最初こそ「自分には継続できないかも…」とか、「つまずいて、行けなくなってしまうかも」と自信の無かった学生たちが、始めてみたら「意外と続けられる!自分にも働くことはできるんだ!」と、自らのポテンシャルに気が付いてくれたときはすごく嬉しいです。
DEI領域の最前線となるために
はじめに伝えたように、僕は多様性、公平性、包括性のある世界を本気でつくりたいし、いまある問題を本気で解決したいと思っています。
その解決策のひとつがこのインターンでもあるし、障がい者人材紹介でもある。そして今もうひとつ行っている企業への障がい者採用コンサルティングを通じてD・E・Iそれぞれの課題解決方法を提供したいです。
これからも4つ目、5つ目と事業を拡大して、DEIソリューションにつながることであればなんでもやりたいと思っています。
インターンシップへの参加が解決になる学生もいれば、自信をつけるまでに12カ月以上必要な学生ももちろんいるので、例えば障がい学生のための大学とか育成機関みたいなものをつくりたいなとか、大きな構想はたくさんあります。
あとはなにより、マイナビパートナーズのミッションである『誰もが活躍するための道を拓き、未来への道標となる。』といことを実現させるためには、障がい者人材紹介業は重要な項目だと思っているので、ここも伸ばしていくために奮闘しています。
もう何十年とDEI領域の最前線を走る会社ってたくさんあるけど、僕はマイナビパートナーズもそこに並ぶような会社にしたいし、この仲間とならできると信じています。