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子どもを保育園に預けて働き始めるママへアドバイス。不安と向き合うときは「深く考えすぎない」ことも大切!元バドミントン選手・潮田玲子さんの生き方<木曜日の相談室 vol.32>

目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」

今回のゲストは、元日本代表バドミントン選手の潮田玲子さん。「いま、わたしが相談したいこと」をテーマに相談を募集し、潮田さんに話をお聞きしました。 


潮田玲子 プロフィール

元バドミントン日本代表選手。1983年9月30日生まれで、福岡県出身。
幼い時からバドミントンを始め、小学生の時に全国小学生大会女子シングルスで全国3位入賞。
中学校3年の時には全国中学生大会女子シングルスで初めて全国大会優勝
その後は、女子ダブルスでペアを組んだ小椋久美子さんとのコンビ“オグシオ”ペアで、女子ダブルス 全日本総合選手権大会を2004年から5年連続優勝。
2007年の世界選手権女子ダブルス銅メダル
2008年には女子ダブルスで北京オリンピックに出場 5位入賞
2009年からは、池田信太郎さんとのコンビ“イケシオ”ペアで全日本社会人大会 優勝、全日本総合選手権大会 優勝
2012年 混合ダブルスでロンドンオリンピックに出場、同年9月に現役を引退。
2014年より、(公財)日本バドミントン協会 広報委員会を務め
2021年には、一般社団法人Woman's ways 代表に就任した。
2023年からはアスリート委員会の副委員長を務めている。

相談①「怪我で練習ができなくて辛いです。どうすれば乗り越えられますか」

ゆうかさん(10代 女性)

私は部活でバドミントンをしています。ですが怪我で1年ぐらい部活ができていません。バドミントンは大好きだしもっと強くなりたいのにできないことが辛いです。どうやったら乗りこえられますか。

怪我をプラスに変えられるかどうかは本人次第!

アスリートに怪我は付き物なので、「プレーしたいのに、離脱しなければいけない」という状況は避け難いものがあります。だからこそ、それをどう乗り越えるかが重要で、大事なのは見方を変えることだと思っています。

怪我してしまった事実は変わりませんし、練習ができずにもどかしいという気持ちも共感できますが、できないものを嘆いていても始まらないので、練習とは違うかたちで自分を高めようとする努力が大切なのかもしれませんね。

リハビリを頑張るのはもちろん、試合の映像を見ることもとても勉強になりますから、自分の好きな選手やトップ選手のプレー動画を見て、どこが優れているのかを分析するのも良い練習になります。

練習から離脱しているときだからこそできることもありますし、復帰したアスリートがその後成功したときに、よく「あの怪我があったからこそ……」と話したりしますが、怪我の期間をプラスに変えられるかどうかは本人次第。怪我を経て、より強くなろうとする気持ちが重要だと思います。

焦らずに、失敗も成功も積み重ねていくことが大事!

私の場合、幸いにも手術するほど大きな怪我は経験しなかったのですが、もともと腰痛持ちで、腰が痛くて練習できなくなることはよくありました。体育館の2階でエアロバイクを漕ぎながら、1階で練習するみんなの姿を羨ましく眺めていたのを覚えています。

ただ、私にはペアを組んでいるパートナーがいたので、彼女が必死に練習する姿に励まされたというのもありました。小椋(久美子)さんが頑張っている姿を見て、「私も早く復帰しなくちゃ!」と頑張れましたし、きっとその逆もあったと思います。

学生時代は成長痛にも悩まされて、スネの内側が痛くなったり、高校生の頃は結構ひどい捻挫も経験しました。中学、高校の部活はそれぞれ3年間しかありませんし、そこで結果を出さないと進路にも影響したりするので、焦る気持ちはありましたね。

でも、今になって言えるのは、結果を出すことは素晴らしいことかもしれませんが、10代で体験したことは、それがうまくいってもいかなくても、すべて人生の経験値として良い方向に積み重なっていくということです。今は怪我の影響で苦しいかと思いますが、どうかこれからも失敗を恐れず、乗り越えていってほしいなと思います。

ストレッチ、アイシング……怪我防止に意識したこと

怪我の防止という点では、私はとにかく練習前後のケアを怠らないよう徹底していました。

練習が始まる1時間前には練習場に行ってストレッチをしたり、ウォーミングアップをしたり、練習後も誰かを捕まえてペアでストレッチをしたり、疲労が溜まっている部分をアイシングしたり、血流をよくするために交代浴したり、栄養バランスに気を使ったり……。

こういうのを毎日続けるのって、意外に大変なんですよ。でも、翌日に疲れを持ち越さないことが怪我の防止につながるので、とにかく体のケアには気をつけていました。

自身も含め、選手が怪我から復帰したときにいつも思うんですけど、みんな本当に水を得た魚というか、怪我する前よりずっと生き生きと練習しているんですよね。復帰するたびに、「競技をできることが当たり前じゃないんだ」と身に沁みてわかるし、コートに帰って来られて「なんて幸せだ」って思いますから、その後もずっとその気持ちを忘れないことが大切なんだなって感じます。

ただし、練習ができるようになったからって、無理してはいけません。バドミントンは接触競技ではないので、怪我をするときも自分に要因がある場合も多いので、完治しても無理せず、二度と同じ怪我をしないよう心がけることも大事だと思います。

「前よりも絶対に強くなってコートに戻ってやろう」というメンタル

「もっと強くなりたいのにできないことが辛いです。どうやったら乗りこえられますか」とのことですが、やはり普段はなかなかできないような強化をするべきだと思いますね。

ゆうかさんがどんな怪我をしたのかはわからないので、具体的なアドバイスは難しいのですが、体を動かさない練習もたくさんあります。とにかくサービス練習のみをし続けて、サービスを極めるというだけでも強さに繋がります。

「前よりも絶対に強くなってコートに戻ってやろう」と思うだけで、バドミントンへの姿勢は変わると思います。私も、いつも「怪我する前より強くなってやろう」と思いながら怪我を乗り越えてきました。体をあまり動かさず、ひとつの技術をひたすら磨くだけでも大きな成長に繋がりますし、映像を見て研究することで、プレーの引き出しを増やすことができます。

部活動だと他の部員もいるはずなので、彼女たちのサポートをするのもいいと思います。バドミントンはチームスポーツではないけど、部活はみんなでやるものなので、そういうときこそ縁の下の力持ちになってみてはどうでしょう? そこで得た信頼は必ず自分に返ってきますし、自分の中でプラスになると思うので、どうか前向きな姿勢で怪我を乗り越えてほしいと思います!
 

相談②「最高のパフォーマンスを発揮するコツを教えてください」

リケジョママさん(30代 女性)

4月から娘を保育園に預けて、フリーランスとして働くつもりです。現在、その準備をしているところです。 一からのスタートで、娘を保育園に預ける選択をしたものの、その保育料すら稼げるのか、不安に駆られる時があります。 潮田さんは、オリンピックなど様々なプレッシャーと闘ってきたかと思いますが、どのようにご自身の不安と向き合ってきましたか?プレッシャーや不安を乗り越えて、最高のパフォーマンスを発揮するコツがあれば、教えて頂きたいです。

なぜその仕事がしたいのか、その「理由」を意識することが重要!

 

リケジョママさんの不安はすごくよくわかります。私自身も働きながら子育てしていますし、普段からママ友仲間ともこういう話をよくしています。

私自身、もちろん常に不安はあります。アスリートの不安やプレッシャーは準備不足からくるものなので、不安を取り除くためには練習するしかありません。バドミントンの場合は、練習することが準備だったので、ある意味でわかりやすかったと言えます。

今は競技を離れていろんな仕事をしていますが、バドミントンと違い、なかなか練習にあたる事前準備ができないケースが多いので、いつも不安を抱えていますね。あとは自分の準備はできていても、例えば子どもが急に熱を出すなど、イレギュラーな出来事も多々起こりますから、そのあたりの覚悟は必要になってくるかと思います。

「その保育料すら稼げるのか、不安に駆られる時がある」とのことですが、それでも自分がその仕事をしたいのはなぜか。その理由となる部分は、今後とても重要になってくると思います。「ただなんとなく」という理由では辛くなってくると思うので、自分が働く理由をしっかり意識して、何が起きても動じない強さを持つことが必要になってくるのかもしれません。

同時に、「もし上手くいかないようなら方向転換すればいいや」と開き直る気持ちも大事だと思います。一度決めたからといって、自分をがんじがらめにしてしまうのでは元も子もありませんし、いろんな選択肢を残しておいていいんじゃないかなって思います。

最初は「とにかく頑張ろう!」と意気込むかと思いますが、あまり自分を追い込みすぎず、柔軟に対応していけるといいですよね。

不安と向き合うときは「深く考えない」ことも大切!

私も現役を引退してからは不安の連続でした。アスリートの場合、セカンドキャリアのほうが長いわけですし、バドミントンという自分の一番の武器を手放すわけですから、そこで勝負できなくなるというのはとても心細かったですね。

当時は、「私はもう選手じゃないんだ」「このままやっていけるんだろうか」と思いましたが、やってみなきゃわからないこともあるじゃないですか? 「とりあえずやっていくしかないな!」っていう感じでやってきたら、気づけば12年が経っていました。

性格的なものもあるかもしれませんが、考えても仕方がないところもたくさんあるので、そういうものに関しては、私はあまり深く考えすぎないようにしています。この先もずっと仕事があるわけではないだろうし、あまり先のことを考えると不安にもなりますが、そういうのって、考えても仕方がないじゃないですか(笑)。

それよりも、目の前にあるすべての仕事で100%を出し切ることで、それがきっと次の何かに繋がるんじゃないかと考えながら頑張っています。成果はすぐに表れるものじゃないですし、安定した仕事をしているわけではありませんが、誠心誠意仕事と向き合っていれば、ちゃんと見てくれている人はいるんだと実感しています。

それに、もし今の仕事ができなくなっても、他に仕事はいっぱいあるわけですから、今度はまたそこで頑張ればいいんじゃないかとも考えています。不安はありますが、とにかく今は毎日、目の前の仕事に一生懸命向き合っていこうって考えていますね。

「ママがハッピーじゃないと家庭はハッピーじゃない」

私がママとしてアドバイスできることがあるとすれば、「ママがハッピーじゃないと家庭はハッピーじゃないだろうな」ということです。お母さんのストレスやイライラは子どもにも向かってしまうし、それについて悩んでいるママ友も少なくありません。

私も本当に気をつけるようにしています。イライラすることもあるし、子どもたちに対して腹が立つこともあるけど、自分の気分の浮き沈みで態度を変えるようなことはしちゃダメだと意識しています。

実は最近、子どもたちに「お仕事楽しい?」って聞かれて、「めちゃくちゃ楽しい」って答えることができたんですよ。ママさんはみんな忙しいし、バタバタしてばかりですが、それすらも楽しむ気持ちが大事なんじゃないかと思っています。リケジョママさんも、できるだけハッピーでいられるように頑張ってほしいと思います。

でも、あまり我慢せず、ときに自分を甘やかすことも大事なので、寝る前の一杯を楽しんだり、(最初は難しいかもしれませんが)新しい趣味を見つけたりして、リラックスしながら乗り越えていってほしいですね。

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