障がいがある学生の就活サポートを通して気づいた、「必要以上に身構えないこと」の大切さ
日本人の「左利き」の割合は、11人に1人。
それと同じくらいいるとされているのが「障がいがある方」です。
少数派と感じるか、身近な存在と感じるか、人それぞれかもしれません。
就活支援をしているマイナビは、障がいがある学生に対しても専用の就職情報サイトやイベントを用意して就活支援をしています。
サービス名は『マイナビチャレンジド』。
障がいがあっても、同級生と同じように社会で活躍できるように、やりたい仕事に挑戦できるように、マイナビが応援できればと思っています。
今回のnoteでは『マイナビチャレンジド』のプロジェクトリーダーを務める井上から、障がい学生を取り巻く現状や、提供しているサービスについてご紹介します。
当事者の学生はもちろんですが、ぜひ採用担当の方にも読んでいただけたら嬉しいです。
精神障がい者の増加、法定雇用率の引き上げ、変化する障がい者採用の状況とは
日本には約1160万人(人口の約9%)の障がい者がいます。これは、約11に1人の割合なのですが、私はとても多いと思っています。周囲には障がいのある方はいない(と思っている)方もいるかもしれませんが、身近な存在と言えるのではないでしょうか。
障がいには、身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいの4つの種別がありますが、労働人口の460万人のうち、半分以上が精神障がい者(発達障がいを含む)です。
これまでは身体障がい者の労働人口が多かったのですが、受診のハードルが下がったことや障がいについての認知が広がったことが一因で、精神障がい者の割合が増えました。
企業には、従業員全体に対して、一定の割合で障がい者を雇用しなければならないという「法定雇用率」が定められています。法定雇用率は年々引き上げられていて、2026年には2.7%になる予定です。
1万人の企業規模だと250人の採用目標が270名に増えます。この2.7%っていうのが結構高いハードルなんですよね。今まで通りに採用活動をしているだけでは法定雇用率を達成することが難しくなると思います。
障がい者採用は今まで、中途採用が主流だったのですが、新卒採用も強化する企業が増え、マイナビにご相談いただくことも増えました。
先述のとおり、これまでは労働人口の中では身体障がい者の方の割合が多かったので、身体障がい者の受け入れ実績はあるという企業は一定数あります。
ですが採用実績のない精神障がい者などには、どのようなサポートをすればいいかわからない、と採用に消極的な企業もあります。身体障がい者に対しては機器や環境を整える必要があるのはわかるけど、目に見えない障がいにどのようなサポートが必要なのかわからないということなのかもしれません。
自分の障がいを開示するかどうか…、障がい学生が不安に感じることとは
『マイナビチャレンジド』は2019年卒からサービスをスタートしました。
『マイナビ20XX』に登録いただいた学生さんのうち、「障がい者のための情報提供を希望する障がい者向けの情報提供を希望しますか?」 項目にチェックを付けていただいた方が対象ユーザーとなります。
障がいがある大学最高年次の学生(以下:障がい学生)は約6000人いますが、年間で4000人ほどが『マイナビチャレンジド』を利用してくれています。
『マイナビチャレンジド』は障がい学生を積極的に採用したり、インターンシップなどのプログラムを開催している企業情報や特集記事を掲載しています。
しかし、まだ求人数や募集職種が限られていることから、障がい者コースへの応募のみで就職活動をする学生は実は2割に満たない状況です。多くの学生は、障がいがあることを伏せて総合コースで応募したり、総合コースと障がい者コースを併願して就職活動をしています。
「どうして障がいを開示しないのか」と思われるかもしれませんが、学生にとっては「自分の障がいを開示することでなにか不利になるのではないか」という不安もあるようです。
障がいがあることを開示するかどうかは、ご本人の自由だと思うのですが、障がい者コースがあることを知らない学生もいるのかもしれません。
総合コースの求人とも見比べながら就職活動を進めることで、自分の選択肢が広がるのであれば、それは良いことなのですが、もし開示のタイミングや伝え方で困っているなら、マイナビからアドバイスできることもあります。
大事なのは自分が納得したファーストキャリアに出会えるのかということと、周囲に必要なサポートが整っているかということだと思うので、『マイナビチャレンジド』を通じて新たな選択肢を見つけてくれたら嬉しく思います。
就職活動の進め方やスケジュールで特別なことはないのですが、障がい学生は気になることがより多くて……。
「障がいコース、総合コースどちらを受けるか」「障がいについて企業に開示するか、開示するならいつか」「採用選考において、配慮してもらえるか」「就職後、自分が活躍・定着できそうか」など、不安を感じるポイントは多岐にわたります。
先日も2026年卒の学生さん向けに、インターンシップの参加に向けてセミナーを開催したのですが、コメントでもたくさんご質問をいただきました。
ただでさえ働くことが初めてで不安なのに、クリアにならないことが多いままだとさらに不安ですよね。
就活中に整理しておきたい「自分に必要なサポート」
『マイナビチャレンジド』では障がい学生のために合同説明会のイベントを開催しているのですが、イベント会場に行くのが容易ではない学生や、自分のペースで繰り返し説明を視聴したい学生、字幕が必要な学生、知り合いに会うことを避けたい(障がいをまだ開示していない)学生がいることなどを加味して、リアルイベントだけではなく、WEB開催も実施しています。
ただ、イベント会場で直接企業と話したい、企業側も学生のコンディションを確認したい、という要望も根強くあったため、先日久しぶりに対面イベントも開催しました。
働いたことがない障がい学生にとっては、「自分がどういうサポートを必要としているのか」を言語化するのも難しいと思います。なので学生には、自分の障がい箇所や働き方の希望を「プロフィールシート」に書いてもらって、小規模な会場で企業とゆっくりすり合わせをしてもらえるようにしています。
どういう雰囲気で働きたいか・指導してほしいかということも書いてもらいますが、これは障がいがあるからではなく、チームで働いていればお互いを理解するために知りたいと思う内容ですよね。
障がい者とのかかわりで気づいた「不要な身構え」
私が『マイナビチャレンジド』のプロジェクトリーダーを任された数年前は、障がいの種別も、障がい者採用のマーケットのことも知見が無い状態で、必要以上に身構えてしまっていたような気がします。
でも、障がい学生たちと話したり、マイナビの特例子会社※で働いているパートナー社員(障がいがある社員)と話すうちに、違和感なくコミュニケーションが取れる実感があったり、優秀な方がたくさんいることを知って、身構える気持ちが自然となくなっていきました。
こちらが「どんなサポートが必要なんだろう」「上手くコミュニケーション取れるかな」と心配しすぎていただけなんだと思います。
特例子会社とのつながりがあり、こういった実体験があったからこそ、企業にも助言できることが増えたと思います。
この仕事に携わるようになってから、自分の知見が広がっていくことも楽しく感じています。マイナビは全国の就活生を対象とした『マイナビ20XX』のように、「マス」に対してのサービスに強みがありますが、特定のユーザーだけを対象としたサービス事例はまだ多くありません。『マイナビチャレンジド』のように困っている方の背中を押すようなサービスを提供できていることをとても嬉しく、誇りに感じています。
しかし業界としてはまだ課題がたくさんあります。
学生は初めての就職活動で不安いっぱいの中、選択肢を広げられなかったり、企業も障がい者採用を強化したい気持ちはあってもノウハウが足りなかったりと……。
学生の多様な選択を『マイナビチャレンジド』がサポートをしていることや、障がい者の採用や定着についてマイナビがご助言していることも、もっと知ってもらえたらと思います。
マイナビのサイトを開けば、障がい者採用をしている企業が全部掲載されているような世界を目指したいですね。