インハウスデザイナーは期日もクオリティもゆるい?マイナビ社内で専門部署を立ち上げ、全社顕彰で表彰されるまで
ドラマや漫画などで描かれる「デザイナーの仕事」を思い浮かべてみてください。
どこかの会社と打ち合わせをして、その会社の広告やサイトのデザインを“請け負って”いる様子が思い出されるのではないでしょうか。
今回はそのようなデザイナーではなく、自社内で自社の広告やサイトのデザインをする「インハウスデザイナー」をご紹介します。
大前は中途入社からわずか3年ほどで、当時はインハウスデザイナーがほぼ存在しない中で、インハウスデザインの部署を立ち上げ、請け負ったプロジェクトで全社顕彰の表彰を受けました。
周囲を巻き込み仕事を拡げていった、3年間の軌跡をご覧ください。
プロフィール
入社して見えたマイナビの課題、デザイナーの必要性
私は2019年4月に、リファラル採用(マイナビ社員の紹介)で中途入社し、『マイナビ看護師』や『マイナビ介護職』などのサイト運営チームに加わりました。サイトのデザインや導線を改修して、ユーザーが長く滞在したり、様々なページをクリックしてくれるようにするデザイナー職を担っていました。
日々アクセス数やクリック数などの目標を追っては、自分の作ったもので結果を出せるのが楽しくて仕事に夢中になっていたのですが、少しずつ「デザイナーとしてもっとできることがあるのでは?」と思い始めました。
当時、デザイン制作やサイト改修は派遣社員などの外注に頼っていることも多く、私たち運営チームはそれをコントロールし、分析しながら改善施策を作る。施策をもとに制作指示を出し、あがってきたものをチェックする。そしてある時は企画もしつつ、素案作成なども行う・・・・・・など、ディレクション業務が中心でした。
運営チームには色々な経歴の方がいて、元Webディレクターや、元デザイナー、元エンジニア、広告運用していた方など。でも前述のディレクション業務がたくさんあるので、それぞれの専門性を生かせる機会が少ないのが課題でした。関わる人間が増えれば増えるほど調整役は不可欠なので、専門性とディレクションを両立するのはなかなか難しいなと感じていました。
社内にデザイナーの専門組織があれば、自社サービスのことも理解しているし、デザインの指針も示せる。ただ単に社内制作を請け負うだけじゃなくて、サイトの集客を良くするための見せ方や導線を示していけるような、デザインのプロがいればサイト運営はもっともっと良くなると考えました。
UXが重視される今、重要なインハウスデザイナーの存在
特にUXという概念が取り沙汰されるようになって、デザインの重要性はさらに高まったと思います。
UXはユーザーエクスペリエンスの略称です。サイトを閲覧する時、使用する時に、ページの読み込みに数分かかるとか、自分が欲しい情報を得るための操作がわかりづらいとか、とにかくユーザーの使用体験を損なうこと。それらを軽減し、よりよい体験を作っていくことが「UXデザイン」と呼ばれ、デザイナーの一つの職種としても認知されてきました。サイトを運営する上でこの辺りの知見も不可欠になってきており、だからこそより一層、社内でデザインの指針を示せる人(インハウスデザイナー)が必要になるなと感じていました。
入社し1年ほど経ったころ、社内でデザイン観点による提案・デザイン制作・コーディング・リリースのサイクルを素早く回していたことも認められてか、事業部内にWEBデザイン課が発足しました。ディレクション部隊と制作部隊が分かれ、それぞれの業務に集中しより効率よくサイトを運営する内製体制の足がかりとなりました。
ただ、当時はメンバーが私ともう一人の2名のみ。当時の課長もシステムの部署と兼任のエンジニアの方だったのでこじんまりとしたスタートでした。
インハウスデザイナーのメリットとして、外に出すよりかは安価で作成できるということが挙げられます。もちろんそれも大きな強みではあるのですが、実際は、サービスを理解している人間が作ることこそが一番の強みだと考えています。
外注・内製にそれぞれメリット・デメリットはもちろんありますが、どちらにせよ「チームで結果を追求する」ことは必要不可欠だと考えています。個人的にはそのチームづくりがしやすいのは内側の事情も見えているインハウスの方が強いと感じています。今までの経験から、外注先に対して社内事情をオープンに話せないからこそ起きる共通認識のズレがあり、「ここさえわかってもらえれば話が早いのにな」と思うことは多々ありました。
インハウスデザイナーはクオリティが低い?期日が緩い?
インハウスデザイナーをネットで検索すると、「制作会社に行く実力がない人がやる仕事」、「同じような仕事ばかりでスキル向上がのぞめない」、「社内だからクオリティや期日など何もかもが緩い」、など少なからずネガティブなイメージが取り上げられています。
私も組織作りをする上で色々検索して調べていたのですが、結構ネガティブな記事に辿り着いて、「え?私の仕事ってそんな風に思われてるの?」と少しショックを受けることもありました。
「デザインのことはよくわからないけど内製なら安いはず!」という金銭面のメリットだけに注視して内製組織作るものの、誰もコントロールする人がいなくなってしまうこともあります。ネガティブな記事もそういう組織の不満から出たものなのかな、と最終的には考えるようになりました。なのでインハウスデザイナーになりたいです!という方はここ最近で増えた印象ですが、それまでは人気も認知度も低かったように感じます。
マイナビのインハウスデザイナーは、部署内でフィードバックを行い、クオリティを保てるように努めています。メンバーをどこでも活躍できるデザイナーにすることを個人的な指針としているので、「インハウスだから楽そうだね」とは言わせたくないと思っています。
期日が緩い、と前述でネガティブイメージとして挙げましたが、社内だと事情が詳細にわかるので、優先度がつけやすく調整しやすいのもあって期日がタイトになりづらいです。
風向きが変わった…!全社顕彰でのチーム賞受賞
結構早い段階で運営チームから離れ、人数は少ないものの組織は作れていたのですが、最初はとにかくインハウスデザイナーっていいんだよ!ということを示すためにスピード重視で取り組んでいて、その価値を示すのに試行錯誤していました。風向きが大きく変わったのは部署編成が変わったことだと思います。
今までは事業部やサービスごとにデザイナーがいたのですが、デザイナーを一部署に集めることになりました。ノウハウが横展開できたり、担えるプロジェクトも全社に広がりました。ただ、社内で私たちのチームが広く知られているわけではなく、いきなり依頼が来ることはもちろんなかったです。
ですが当時の上長がとにかくコミュニケーションに長けた方で、「自分はデザインについてはあまり知見がないけど、とりあえず社内で仕事取ってくるね!」というスタンスでした。私達はとにかく上司がとってきてくれた仕事はリピートいただけるようにチーム内で丁寧に応対・制作していくよう心がけました。コミュニケーションでは専門用語を使いすぎない、相手に敬意を持って接する、現状対応が難しそうな要望でも代替案や折衷案は用意する、など、社内とはいえ人と人との関係なので、その部分は特に気をつけていました。
そういった取り組みが功を奏して、デザインを担当する領域は着実に増加。組織も拡充を続けています。
特に印象深いのはマイナビの創業50周年プロジェクトです。制作会社から提案いただいた別の企画案があったものの、私たちの方が社内の解決すべき課題などをより深く知っているからこその企画提案ができ、コンペを勝ち抜きました。
このプロジェクトももちろん後押しになったと思いますが、今までの枠にとらわれない活動も相まって全社顕彰でチーム賞を受賞するに至りました。チーム全員で大喜びしたのを覚えてます。
作って終わりではなく、並走していける組織へ
インハウスデザイン組織として、ディレクターや社内のステークホルダーと密にミーティングを重ね、上流工程からサービスに関わっています。今はリソースの制約があり、すべてのマイナビサービスを担当できている訳ではありませんが、今後は全サービスにおいて、並走できるデザイン組織を目指したいと思っています。
私自身は責任者としての経験は浅いので、まだまだ未熟な部分も多いのですが、支えてくれているメンバーたちに少しでも報いていけるよう、この組織と一緒に並走できればと考えています。