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「自己肯定感はどう高めればいい?」「趣味と仕事は切り離すべき?」学生の深い悩みに声優・森久保祥太郎さんが回答!<木曜日の相談室 vol.25>

目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」

今回のゲストは、声優で俳優、歌手の森久保祥太郎さん。「いま、わたしが相談したいこと」をテーマに相談を募集し、森久保さんに話をお聞きしました。

森久保祥太郎さん プロフィール
96年にアニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』で声優デビュー。
以降アニメ、吹き替え、ゲーム、ラジオパーソナリティ、舞台、ナレーションなど幅広い分野で活動。
代表作は『MAJOR』茂野吾郎、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』奈良シカマル、 『東京リベンジャーズ』稀咲鉄太、吹き替え『クリミナル・マインド』Dr.スペンサー・リードなど代表作は多数。
ランティスレーベルにてアーティストとしても活動中。


相談①「自己肯定感の高め方を教えてください」

翡翠さん(20代・女性)
私は今就職活動の最中なのですが、長所を書いたり自己PRを書いたりすることが苦手です。なかなか自分に自信が持てないタイプで、良い所をアピールしなくてはならないのに、悪い所ばかり出てきてしまいます。
森久保さんはどうやって自己肯定感を高めていますか? 役者さんは自己分析が出来ているという勝手なイメージがあるので、何か良い方法等あれば是非教えていただきたいです。

「自分は何を頑張ってきたか」を考えることが大事

きっと翡翠さんと同じように、自分の長所と短所がわからずに悩んでいる人は多いと思います。でも多分、「こんなことを長所って言っていいのかな」というところに長所は隠れているんじゃないかと思うんですよ。

僕は10代の頃からずっと、自分のことをスキャニングしてメモに書き出す習慣があります。自分が好きなもの、嫌いなもの、苦手なもの、夢中になれるもの、一所懸命になれるもの、この先どんな人間になりたいか……といったことを、あらゆる角度から自分の考えを書き出すんです。すると、自分というものが見えてくるんですね。

翡翠さんも、今までの人生があって今があるわけですから、自分の過去を紐解けば、必ず自分が好きなもの、のめりこんできたことがわかるし、その中で自分の長所やいい部分も発掘できるような気がします。結局は、「自分は何を頑張ってきたか」を考えることが大事だと思います。

「役者になるか、音楽の道に進むか」の二択で悩んだ高校時代

僕は高3になる頃に、将来について考えてみました。

僕は小2から英語演劇を習っていました。基本的に、その習い事は演劇を通して英語に慣れ親しむことが目的だったのですが、僕は英語よりもお芝居の楽しさに目覚めてしまい、それ以来、ずっとお芝居を続けてきました。同時にバンド活動にも力を入れていたので、将来は役者になるか音楽の道に進むかの二択で悩んだ時期がありました。

そこで自己分析をして、自分の強みや弱みをあらゆる角度から分析した上で、音楽よりもお芝居のほうが評価を得てきたことや、のめり込んでやっていた自分に気付き、「音楽は好きだけど自信はないから、趣味として一生やっていこう」と考えるに至ったんです。

かと言って、役者で食っていける自信があったわけでもありません。それまでの人生で何が一番楽しかったか、辛い事があっても何を一番頑張ったかをしっかり分析したことで、役者の道に進む覚悟が決まったということです。

「基礎的なスキルがない」という“強み”

結局、今では声優業にどっぷり浸かっているので、高校時代に予定していた道を進んでいるわけではありませんが、逆にそれも自分の強みだと思っています。

僕らくらいの世代だと、声優になりたい人は早い段階から養成所に通い、スキルを磨いていました。だけど僕はたまたまご縁があって、後から声優業界に横入りした人間です。当然、基礎的なスキルもありません。本当に下手くそで、冷や汗と恥だけをかきに現場に行っているようなものでした。

そもそも劇団も仲間と一緒にやっていただけで、プロにしっかり演技を習ったこともありません。自分たちで独自の練習をひたすら重ねていただけなんです。でも、そんな環境で育った人間ならではのストーリーや土臭いインディーズ感は、当時、他の同世代の仲間にはなかなかないものだと思い、そのバックボーンは自分の武器にしてしまおうと開き直ることにしました。

当時は「異端でいよう」と思っていましたし、周りから「声優っぽくないよね」と言われると純粋に嬉しかったですね。もし、初めて声優のお仕事の話をもらったときに、「僕は声優の経験も自信もないのでやりません」と断っていたら今の人生はありませんでした。

翡翠さんは「良い所をアピールしなくてはならないのに、悪い所ばかり出てきてしまいます」とおっしゃっていますが、僕は一見、弱みにしか見えないようなものでも、見方を変えて強みにしてきました。きっと翡翠さんも「悪い所」だと思っているだけで、見方を変えれば「良い所」がたくさん見つかるはずです。

自己肯定感は高くなくていい。大事なのは「いい」も「悪い」も認めること

「どうやって自己肯定感を高めていますか?」とのご質問ですが、うーん……自己肯定感って、何なんでしょうね?(笑)

よく「自己肯定感が低いのは問題だ」みたいなふうに言われていますが、僕は、もし「自分の良いところを好きになる」というのが自己肯定感とするならば、それは高くなくてもいいと思っています。自分の好きな部分も嫌いな部分も、いいところも悪いところも認めることが大事で、総じてそれが自己肯定感だと思います。

人生は他の誰でもなく、自分のものですから、自分のいいところや悪いところは自分がわかっていればいい。ましてや他人に決めさせることではありません。他人と比べて、自分なんてちっぽけだと考える必要もありません。

まだ何者でもなかった下積み時代の僕は、毎日すごくワクワクしていました。玉置浩二さんの『メロディー』という曲が好きなのですが、その曲の中にこんな歌詞があるんです。

「あの頃は なにもなくて それだって 楽しくやったよ」

玉置浩二『メロディー』より

当時はお金もなかったし、ボロボロのアパートに住んでいて、それこそ本当になにもなかったけど、ひたすら楽しかったし、将来の可能性を信じるだけでご飯が進みました(笑)

自己分析で見える「自分だけのストーリー」

自己分析について「何か良い方法等あれば是非教えていただきたいです」とのことですが、やはり自分は何が好きか、何が嫌いか、何をしたいか、何をしたくないか、10年後にどんな自分でいたいか、なんでもいいので、思いつくすべてをメモに書き出してみると思います。

人間って、平気で自分で自分に嘘をつけると思うんです。頭で考えているだけだと、自分で自分にカッコつけちゃうというか、都合がいい方へばかり考えてしまう。ペンで紙に書き出すことで、リミッターがかかっていたものが外れて、本当の意味で自分に向き合えます。そうすると、「あっ、自分って実はこんなことを考えていたのか」「こんなところがダメなんだな」と、思いもよらない発見があったりします。

メモに書き出せば、必ず翡翠さんだけのストーリーが見えてくるはずです。ぜひ、自分の今まで生きてきた人生や培ってきたものを信じてください。いいところも悪いところも見えるし、そこが見えれば「この先、どうなりたいか」という未来の自分も見えてくると思います。どうか、今までの自分を受け止めてあげてください。


相談②「趣味と仕事はきっぱりと切り離すべき?」

やなぎ大仏さん(20代・女性)
私は2021年5月から2年間イギリスで生活しており、6月末に日本に帰ってきました。現在、絶賛就職活動中で、イギリスで身につけた英語力を活かせる仕事を探しています。そこで目をつけているのが、自分がイギリスで魅了されて合計130公演以上観てきたミュージカル業界です。
ミュージカルの日本での上演権の交渉などは英語を使ってBroadwayやWest Endなどの英語圏のクライアントと交渉するので、自分に向いているのではと考えています。
ですが、個人的に大好きな趣味を仕事にしてしまうと、今後仕事で嫌なことを経験した際に大好きな趣味も徐々に楽しめなくなっていってしまったり、裏側の世界などを知って今までとは違う視点で舞台を見るようになってしまうのではないかと心配です。
森久保さんは趣味と仕事はきっぱりと切り離すべきだと思いますか?

仕事と趣味は切り離さなくていいが、“覚悟”は必要だ!

結論から言うと、仕事と趣味は切り離さなくていいと思います。でも、“覚悟”が必要なのかなとは思いますね。

まず大前提として、趣味を仕事にしても、趣味を仕事にしなかったとしても、「仕事」というものには、いいこともあれば辛いこともあります。ただ、趣味を仕事にした場合、思い入れが強いぶん、うまくいったときの喜びも、描いた理想と違ったときの悲しみも、大きくなって返ってくると思います。

だけどやっぱり、好きなことを仕事にするのが一番エネルギーも湧いてくるし、裏も表も知ったうえでまだ好きでいられれば、それはすごく幸せなことだと思います。

声優の仕事を“仕事然”とこなしている理由

こんなこと言っていいのかわかりませんが、僕の場合、本来目指していたのは俳優だったので、語弊を恐れずに言えば、声優の仕事はすごく“仕事然”としてこなしています。

劇団をやっているときは、劇団の進む方向や脚本の内容について思うことが多々ありました。自分達でつくった劇団だったし、思い入れも強かったので、少しでも違うと思ったことがあれば細かく指摘してみんなでゼロから作っていました。

しかし、声優業は、多くの各方面でのプロが関わり作られたプロジェクトの一端を、仕事として請け負うものと考えていますから、もし「なんだこの脚本は!」と思うような仕事が入ってきたとしてもそこに疑問は持ちませんし、「こんな役はやりたくない」だなんて微塵も思いません。むしろ、大好きな芝居で経験値がつめると考えてラッキーだと思っています。

きっと、「こんな声優になりたい」という思いが強い人ほど、やりたいことも明確に決まっているし、その中で「この仕事は自分がやりたいことじゃない」というこだわりも出てくると思います。僕の場合は「こんな声優になりたい」よりも先に「自分のスキルを使ってもらえて、それが仕事になるなんてありがたい」があるので、冷静に仕事に向き合えていると思います。

逆に僕は音楽にはかなりこだわりを持ってしまう。というのは、音楽活動では自分でゼロから音楽も歌詞も作っているので、妥協はできないし、思い通りにいかないときはすごく辛いですね。劇団時代と同じです。ただ、本当に好きなことなので、思い描いたとおりになったときの喜びはすごく大きなものがあります。

音楽を仕事にした結果、「めちゃくちゃ苦労していますよ」

僕も音楽で食べていこうかと考えたことはありましたが、単純に自信がなかったんですよ。苦労してでも音楽でメシを食う自信はなかったし、それならずっと楽しいものとして身近に置いておきたいと思いました。プロになれるほど練習していたわけでもなかったですしね。

実際、僕は声優の仕事と並行して、趣味でインディーズバンドを続けました。結果的に、後にバンドでメジャーデビューさせてもらったり、ソロ名義でCDを出すこともできて、音楽もちゃんと仕事として取り組むようになったのですが、やっぱり仕事にした途端、めちゃくちゃ苦労していますよ。

レコードレーベルから曲を発表するというのはセールスの責任も出てきますし、音楽の売り方も時代の流れによって大きく左右されます。単純に、「自分が好きな音楽をだけを作っていても良いのか?」など余計なことまで考えないといけません。

インディーズの頃なら、責任は自分が全て負うだけですから、内容や売り方などすべての判断や行動はフットワーク軽くいられましたが、仕事となり関係者が増えると自分の一存では判断できないことも出てきますし、いろんなしがらみやもどかしさも正直あります。

ただし、そのおかげでインディーズでは見られない景色を見せてもらっているわけだし、こうした苦労もひっくるめて、僕は音楽が好きなんだと思えています。

運命的な出会いをしたなら、後悔するよりまずはやってみること

やなぎ大仏さんの場合、まずは好きなことをやってみるのがいいと思いますよ。

そもそも、コロナ禍ですごく大変な時期に2年間もイギリスに留学して、ミュージカルに出会ったわけですよね。ミュージカルを仕事にして、そこで留学中に身につけた英語のスキルを活かせるのであれば、それはとても運命的だと思いますし、やらないと後悔してしまうんじゃないかと思います。

ミュージカル業界でお仕事をするようになれば、「私はこういうミュージカルがいいんだ!」というこだわりが出てくると思います。「このミュージカルは絶対に素晴らしい!」と訴えても、企画が通らないこともあるかもしれません。だけど、時間はかかるかもしれませんが、自分の作りたいものが作れるようになるまで頑張ることも重要だと思います。

もし「思ったような仕事ではなかったな」と感じても、やなぎ大仏さんほどのバイタリティがあればいくらでもやり直せるでしょうし、それはそもそも失敗でもなんでもありません。英語力を活かせる場所は、他にいくらでもあると思います。

繰り返しますが、好きなことを仕事にするのであれば、大前提として覚悟が必要です。でも、やなぎ大仏さんの場合は出会うべくして出会った夢だと思うので、まずはミュージカル業界に飛び込んでいく姿勢を応援したいと思っています。ぜひ頑張ってください!

●おしらせ●
マイナビとnoteは2023年8月10日から9月9日まで、「#あの選択をしたから」をテーマにコンテストを開催しています。
今回のコンテストでは、大賞マイナビ賞に副賞をご用意しています。投稿いただいた記事がよりたくさんの方に届くように、大賞には声優・森久保祥太郎さんによる投稿作品の朗読を予定しています。
詳細は▼こちら▼をご覧ください


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