「言葉は無料で使える調味料。使わないのはもったいない」料理研究家・リュウジさんがみんなの料理にまつわる悩みに回答!<木曜日の相談室 vol.26>
目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」。
今回のゲストは料理研究家・リュウジさん。「いま、わたしが相談したいこと」をテーマに相談を募集し、リュウジさんに話をお聞きしました。
相談①「夫が料理の感想を言ってくれません」
「美味しい」を言わないことで、旦那が損をしている!
なるほど……う〜ん、なんだろうね。
「美味しい」という言葉はちゃんと声に出したほうがいいけどね。
これは単純な話で、「美味しい」って言ったほうが料理は美味くなるから。
「美味しい」って言われれば、料理を作る側もテンションが上がって、もっと料理を楽しむようになるじゃないですか。
「次はもっとこういう工夫をしよう」って頑張るだろうし、「もう一品作っちゃおうかな」って張り切るかもしれない。
そうやっていくうちに、どんどん料理の腕も上達するじゃないですか。
だから、損しているのは旦那さんなんですよ。「美味しい」っていうだけで料理が美味しくなるなんて、ヤバくないですか? コストもかからないんですよ?
料理は調味料を使って美味しくしていくものだけど、料理を食べる側も「言葉」という名の調味料を持っているんですよ。
それを使わないなんて、相当もったいないですよ。
俺も毎日料理してるから、ハヤヤツコさんの気持ちはわかります。
せっかく手間のかかる料理を作っても、誰からもリアクションをもらえないのであれば、「もう出来合いでいいや」「適当に煮込むだけでいいや」って適当になっていくし、俺はみんなが「美味しい」って言ってくれなくなったら、もう料理を作ろうという気も起きません。
実際、こうしてハヤヤツコさんが俺に相談しているということは、すでにテンションが下がっているっていうことじゃないですか。
俺のこの回答は、ぜひ旦那さんに見せてあげてください。「美味しい」って言わないと自分が損するんだよ、ってね。
「言葉は無料で使える調味料」
逆に、「美味しい」という言葉を引き出す方法もあります。料理を出すときに、その料理のプレゼンをするんです。
「この料理はこうやって煮込んだんだよ」「隠し味でこの調味料を入れてるんだよ」「粉末の乾燥ハーブを入れたんだよ」「下茹でしたからいつもより美味しいと思うんだけど」って感じで。
そうするだけで、相手ももっと料理が美味しく感じるはずです。なんでかというと、自分の舌でその味を探すようになるから。
黙って料理を出すだけじゃなく、相手に興味を持たせるのも大事なんですよ。「リュウジがこう言っていた」でもいいし、なんなら俺がYouTubeで言っていたことをそのまま真似してもらってもいい。
ちょっといいレストランなんかに行くと、一皿ずつ料理の説明をしてくれるじゃないですか。まさにあんな感じですね。
料理を作った側がプレゼンすることで相手も意見を言いやすくなるし、お互いが食事に向き合っているほうが会話も広がります。
言葉は無料で使える調味料なんですよ。
それは食べる側だけではなく、作り手にとってもそう。俺が料理を始めたキッカケも、家族に料理を作って「美味しい」って言ってもらえたからだし、それくらい言葉って大事なんですよ。食事に対する夫婦の会話が増えていけば、ふたりの食生活も自然と豊かになっていくと思います。
相談②「妊娠中に注意すべきポイントが知りたい」
塩分の摂取量は“1日のトータル”で考えよう!
俺は独身だし、子供もいないから、妊婦さんの食事についてはほとんどわかりません。
ただ、妊娠期のバランスのいい食事についてちょっと調べてみたところ、「非加熱食品を食べないほうがいい」ということ以外は、割と普通の人が摂るべき理想的な食事に近いように思いました。「妊婦は塩分を摂りすぎてはいけない」とされているようですが、これも妊婦に限ったことじゃないからね。
俺がよく言っているのは、みんなあまり「量」の概念を把握していないということ。確かに俺のレシピは塩味が強いものも多いんですけど、実は俺自身の塩分摂取量ってめちゃくちゃ少ないんですよ。なぜなら、少食だから。
塩分やカロリーは、トータルの量で考えなきゃいけないんです。俺はもともと少食だから、味が濃いものを食べても、1日のトータルで見れば塩分の摂取量は多くありません。
あとは昼間にラーメンを食ったら、夜は塩分が低い野菜系の料理を食べることにして、1日の中で帳尻を合わせたりもしています。
“この世に存在するすべての物質は毒である”と言われています。要するに、毒ごとに接種上限が決まっているという話で、塩分を摂りすぎると死ぬように、水も飲みすぎると死ぬ。結局、どこまで自分でコントロールするかという話なんですよ。
塩分過多は心疾患、脳卒中のリスクなどが増大すると言われているので、WHOは塩分の摂取量を1日5g未満にせよと推奨しています。
ちなみに、俺はいつ死んでもいいという観念を持っているんですけど、あまりに塩分を摂り過ぎてしまうと苦しんで死ぬことになるので、それだけは避けたいと思ってますね。
ちょっと話が逸れたけど、まずは1日に接種する塩分を5g以下と決めて、その基準に沿って料理を作っていく方法がいいんじゃないかと思います。
塩味は“旨味”に置き換えられる! 旨味調味料のメリットとは
減塩という意味では、旨味調味料はめちゃくちゃ使えます。
もちろん、旨味調味料も「グルタミン酸ナトリウム」だから塩分は入っているし、摂りすぎはダメですよ。
でも、旨味を強くすることで食事の満足度が高くなるという調査結果も出ていますし、旨味調味料で旨味を足すことで、使用する塩分量は約3分の1にまで抑えられます。
旨味調味料を使うことに抵抗を感じる人も多いんですけど、実は減塩食にも旨味調味料はよく使われているし、味覚障害を回復させるためにも利用されていたりしています。
塩味を旨味に置き換えることで塩分がカットできるので、例えば塩や醤油の量を半分にして、そのぶん旨味調味料で補うことにすれば、満足度はそのままに塩分量を抑えることができます。
だから、のんさんの奥さんも食事をガラッと変えるより、塩分と旨味のバランスを調整していく方がいいと思いますね。
それでも塩分を摂りすぎてしまった場合は、カリウムや水分を摂って、塩分を体外に排出しましょう。
俺は毎日めちゃくちゃ水を飲んでいます。自宅のウォーターサーバーは、いちいちボトルを変えるのが面倒くさいので、水道と直結させました。水を飲む習慣をつけるのはおすすめですね。二日酔いにも効くし。もちろん妊婦さんに酒は禁物ですけど。
減塩料理なら「無限ザクザクなす」がおすすめ!
「おすすめのレシピがあればぜひお聞きしたい」ということですが、減塩という観点で言えば、俺のYouTubeで紹介した「無限ザクザクなす」はおすすめです。
詳しくは「正直、ほぼポテチです。混ぜるだけ超簡単ザクザク揚げ茄子」という動画を見てほしいんですけど、塩は一切使っていません。
味付けにお塩控えめのほんだしを使っていて、これでカツオの旨味を付けているんですけど、塩なしでもめちゃくちゃ美味いから。
揚げ物だから脂質はちょっと上がるけど、減塩料理としては優秀ですので、ぜひ作ってみてください。
あとはさっきも言ったように、俺のレシピに書いてある塩や醤油、オイスターソースなどの使用量を3分の2くらいにして、少なくなった分の塩分量を旨味調味料の旨味で補うという方法がおすすめですね。
ということで、こんな回答でいかがでしょうか?