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「老いへの恐怖がある」という相談に「大事なのは自分で納得できるかどうか」とアドバイス。サリngROCKが語る「演劇人生」と「老い」との向き合い方<木曜日の相談室 vol.33>

目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」

今回のゲストは、『BAD LANDS』で映画デビューした注目の俳優・サリngROCKさん。「いま、わたしが相談したいこと」をテーマに相談を募集し、サリngROCKさんに話をお聞きしました。
 

サリngROCKプロフィール

1980年大阪府出身。自身が中心となって結成した劇団「突劇金魚」の脚本・演出を手掛ける。脚本家としては、OMS戯曲賞・AAF戯曲賞を受賞、岸田戯曲賞の最終選考にも2度残っている。演出家としては、若手演出家コンクール優秀賞を受賞。映像の仕事として映画『BAD LANDS』に初めて出演し、第78回毎日映画コンクールのスポニチグランプリ新人賞、「おおさかシネマフェスティバル」新人女優賞受賞の受賞に至る。


相談①「舞台女優になりたいのですが、自信がありません」

 さにさん(10代 女性)

私は今高校一年生です。小さい頃にお母さんに連れて行ってもらってミュージカルを見たのをきっかけに、舞台女優になりたいと思うようになりました。でも学校で演劇部に入っている以外は特に何もしていなくて、女優だけで生活していく自信もないのでこのまま普通に大学生になって会社に入るのかなと思っています。いつから、お芝居で食べていこうと思うようになりましたか?また演技の勉強はどうやっていますか?

サリngROCKが演劇の道に進んだのは「就活が嫌すぎた」から

舞台女優になりたいけど、部活以外は特に何もしていない、ということですね。そんなに気にすることじゃないと思いますよ。むしろそれについて危機感を覚えて、こうして相談してくれただけで、意識が高いんじゃないかと思います。

私も10代の頃は「将来はお芝居で食べていこう」と考えていませんでした。単純に就活がめっちゃ嫌やったんですよ。大学では演劇サークルに入っていたんですけど、先輩たちが卒業後に自分の劇団を立ち上げたりするのを見ていたので、自分もそうしてみたんです。親にはそれっぽく「もう少しちゃんと演劇を続けたい」って言いましたが、本当は就活が嫌すぎただけっていう(笑)。

結局、就活はせずアルバイトをしながら演劇を続けました。いつか「就職してもいいや」って思えるようになったら就活しようかな、くらいに思ってたんですけど、演劇を続けているうちに、演劇仲間たちからの要求も高くなってきて、それに頑張って応えているうちに演劇一本で生活できるようになっていたっていう感じですね。

ちなみに、一緒に劇団を立ち上げたメンバーは私以外、今は誰も残っていません。

高校卒業直前、惑星ピスタチオの公演で演劇の面白さを知る

そもそも私が演劇に興味を持った時期も、さにさんより全然遅いと思います。

私は小・中学生の頃、お笑いが大好きやったんですよ。テレビで見ているだけでしたけど。だから舞台に立っている人っていうのは割と身近な存在だったし、一時期は漫画家になりたいとも思っていたので、多分、物語を作ることに対する憧れがあったと思うんです。

実際に演劇を始めたのは高校1年生のときで、友達に誘われて演劇部に入りました。弱小校だったんですけど、部内にめっちゃ演劇好きな先輩がいて、その先輩は「一緒に演劇を見に行こうよ」と何度も誘ってくれたんですけど、私はまだ演劇に対してそんな熱い思いもなかったので、ずっと行かずにいたんです。

だけど、私が高校を卒業するタイミングで、先輩が久しぶりに観劇に誘ってくれたので、「一回くらい行ってみようかな」と思って行ってみたら、その演劇がめちゃめちゃ面白くて(笑)。惑星ピスタチオっていう、かつて佐々木蔵之介さんが在籍していた有名な劇団の公演だったんですけど、「演劇ってこんな面白いんや!」って感動しました

そこでようやく演劇に興味を持ち始めて今に至る……って感じですね。

モチベーションは「仲間に認めてもらいたい」という思い

さにさんはちょうど高校生くらいですかね。だとしたら、全然これからですよ。私は同じ年の頃、ただ弱小校の部活に入ってただけでしたから。部活の内容も、週2〜3日ペースで筋トレしたり、次の公演を何にするか話し合ったりするくらい。公演の3週間くらい前からはほとんど毎日練習でしたけどね。

大学に入ってからも、ちゃんと演劇の勉強をしようとまでは考えていなかったし、むしろ「ちょっとなんかよくわからないものの方がカッコいい」と斜に構えていました。


ちゃんと演劇に力を入れ始めたのは大学卒業後。関西の若手向けの演劇賞レースみたいなのにエントリーして、そこで割といい結果をもらったりしていくうちに、観に来てくれる人が増えていったんです。28歳で「OMS戯曲賞」の大賞を受賞してからはお客さんもグッと増えましたし、批評家の方も観に来てくれるようになりました。

そのくらいから演劇仲間も増えてきて、今では相棒的存在になっている山田蟲男くんとも一緒に演劇をやるようになって、「もっと多くの人に受け入れられるにはどうすればいいか」って試行錯誤し始めたんです。

ただ、私としては山田くんに認めてもらいたかっただけというか、一緒におる仲間を納得させたかっただけで、「売れたい」と思って頑張っていたわけではありません。今もそんなところがあるのでプロ意識についての自覚もありません。なんなんでしょうね、プロ意識って。

結果的に大事にしていたのは「素直でいること」

私がこんな風にやってこれたのは、素直だったことと、ラッキーだったことが大きいと思います。

今思い返せばですけど、私のことを成長させようとしてくれる人たちのアドバイスは、めっちゃ素直に聞いていたと思うんです。ちょっと別の話ですけど演劇の道に進んだのも、「就活したくない」という心の声に素直に従ったからやし(笑)。

『BADLANDS』の映画に出演したこともラッキーでしかないですよ。原田監督が関西弁を使う俳優を探している中で私がヒットしたみたいなんですけど、もし私が「東京で売れてやる!」と思っているタイプだったら大阪にいなかったでしょうし、そうしたら『BADLANDS』のお話もいただけていなかったはずですからね。

「無理に東京に出ていくのも疲れそうだな」っていう思いに素直に従った結果です。

サリngROCKが実践する演劇の勉強法

「演技の勉強はどうやっていますか?」とのことですが、ひとつは他の俳優の演技を見ることですね。私の身近に凄い俳優(突劇金魚を一緒にやっている山田蟲男と、かつて突劇金魚を一緒にやっていた片桐慎和子さん)がいて、彼らの演技を私は誰より近くで見てきました。身近なところじゃなくても、参考にできる俳優を見つけて、その人の演技を徹底的に分析するっていうのはとてもいい勉強になると思います。

私は43歳で『BADLANDS』に出演させてもらいましたが、20〜30代の頃ならああいう演技はできていなかったと思います。20年演出し続けてきたという蓄積があって、そのなかで引き出しが増えていったからこそできたというか……そういう意味では、演出に回ってみるのもいい演技の勉強になると思います。人の演技をめっちゃ真剣に見るようになるので。

あとは本ですね。相棒の山田くんが本をめっちゃ読んで勉強しているんですけど、彼のオススメの本は私も素直に読むようにしています。例えば『イヴァナ・チャバックの演技術:俳優力で勝つための12段階式メソッド』という本は読んでみるといいんじゃないでしょうか

さにさんは10代ですし、将来どうなるかはまだわかりません。でも、どうか自分の心の声に素直になってほしいと思います。舞台女優になりたいのであれば、自分がやりたいと思える範囲で勉強すればいいと思いますし、もし別の道を歩むことになっても、それをネガティブに捉えず、そっちがやりたいことになったんだということなんですから、新しい道を楽しく生きていってください!

 

相談②「老いることに恐怖を感じてしまいます」

さらぴこさん(20代 女性)

最近、年齢を重ねる毎に老いを感じて恐怖を感じています。抗うべきなのか、流されそのままでいるべきなのか悩んでいます。サリngさんは老いについてどう考えていますか?

「老い」を恐ろしく感じてしまう4つの可能性

まずさらぴこさんが「老い」の何に恐怖を感じているのかな、って考えてみました。そして、私としては4つの要素あるのかなと思いました。

1つ目は単純に、皮膚がたるんだり、皺が出てきたりする“見た目の劣化”。2つ目は、病気になりやすくなったり、視力が悪くなるなど、“健康面の劣化”。3つ目は老いの先に待っている“死に対する恐怖”。最後が漠然とした“将来への不安”です。

これらについては、私もそれぞれに対して思うところがあるので、少し整理して考えてみたいと思います。

見た目に気を使うのは「納得がいくような自分でいたい」から

まず、1つ目の“見た目の劣化”に関して。さらぴこさんは、「老い」に「抗うべきなのか、流されそのままでいるべきなのか」と悩んでおられますが、私は多分、同世代の中では抗っているほうなんだと思います。

でも、それは老いが怖いというより、常に一番良い状態でいたい、または納得がいくような自分でいたいという思いがあるから、運動したり、食事内容に気を使ったり、洋服を選んだりしているだけなんです。

私の場合は人前に立つ職業ですし、役者さんに対して「もっとこうしてください」と指示することも多いので、あまりみすぼらしい見た目をしていると、「なんでお前に言われなあかんねん」って思われてしまいそうなので、自分の見た目には気を付けざるを得ないって思っているところもあります。

ただし、無理するのは嫌いなので、できそうなことしかしていません。運動といってもYouTubeを見ながら1日30分程度、身体を動かしたりするだけ。あとはメンタリストのDAIGOさんが「朝一で水シャワーを浴びるといい」と言っていたので、それなら私でもできそうだなと思って続けています(笑)。ただ、無理はしたくないので、夜な夜なお酒を飲んでベロベロに酔っ払っては、おつまみをバクバク食べる日もあります

だけど結局、“見た目の劣化”については自分が納得できるかどうかが大事なんだと思います。スキンケアなどを頑張ることが不自然な行動だと感じるなら、意地になって抗うことなく、「そのままでいる」ことが自然でしょうし、それで自分が納得できれば全然いいんだと思います

「死はみんなが迎えるもの。怖がる必要はない」

2つ目の“健康面の劣化”について、私はあまり意識できていなくて、健康診断も行ったことがないんです(苦笑)。

老眼はありますが、その他の不調は特に感じていないので、今のところ私からアドバイスできることはなさそうです。すみません。この面での「老い」には私も恐怖を持ったほうがいいかもしれませんね。

3つ目の“死に対する恐怖”について言うと、私は、死は全然怖くないんです。むしろ待ち望んでいるくらい。私の場合は“苦の状態”が嫌だという思いが強いので、「これ以上生きていたらしんどいことがあるかもしれない。だったらもうここで終わってもいい」という考え方があるのかもしれません。私は目の前のことをただクリアしながら生きているだけで、将来どういうふうになりたいというビジョンもありません。

さらぴこさんは、人生の目標がしっかりあってそれが達成できないまま死ぬのは怖い、という気持ちがあるのかもしれませんね。でも死はいつ訪れるものかわからないので、そんなわからないことを恐れるよりも、その目標に向かって今できることに没頭するだけでいいんじゃないかなと思います。

でももし、さらぴこさんが漠然と死を怖がっているようであれば、YouTubeでも死生観について諭しているお坊さんなどがいっぱい出てくると思うので、それを視聴してみるのもいいと思います。

「年を重ねたほうが人生は楽しくなる」と感じる理由

最後に、“将来への不安”について。私は30代前半のとき、急に「将来、ホームレスになったらどうしよう」って本気で怖くなったことがありました。ようやくバイトも辞めることができて、演劇だけで生活し始めた頃です。

でも、考えているうちに、「ホームレスになるまでの過程が飛びすぎているな」って気づいたんです。ホームレスになるまでいろんな段階がありますし、もしそれでもホームレスになるなら、私はきっと自分の意志でその道を選んでいるだろうなって思うんです。

私が納得できるならホームレスでもいいし、もし納得できないんだったら多分、そうなる前にバイトして、どうにか生活するはずなので、あまり怖がらなくて大丈夫だと思っています。

私は基本的に、年を重ねたほうが人生は楽しくなると考えています。年を重ねるにつれてできることも増えていますし、物の見方も多様になったり、20代の頃より今のほうが楽しいですし。きっと50、60歳になる頃のほうがさらにできることも増えていて、今より楽しいんじゃないかという気もします。

結局、誰でも必ず年は取ります。老いに抗うにしても、流されるにしても、自分が納得のできるように考えられれば、それが正解なのではないでしょうか。 


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