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「ひたすら自分と向き合えば、必ず答えは出ます」カヌーメダリスト羽根田卓也が語る、壁に当たったときの“決断力”<木曜日の相談室 vol.14>

目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」。

第7回目のゲストは、前回に引き続きカヌー・スラローム選手の羽根田卓也さん。「いま、わたしが相談したいこと」をテーマに相談を募集し、羽根田選手に話をお聞きしました。

羽根田卓也プロフィール
1987年、愛知県豊田市出身。カヌー選手だった父の影響で小学生時代から競技を始め、高校3年時にカヌー・スラロームの日本選手権を制し、卒業後は単身スロバキアに渡って武者修行。10年間以上スロバキアを拠点に活動し、2008北京五輪から4大会連続出場。2016リオ五輪で銅メダルを獲得。パリ五輪へ向けて5大会連続出場を目指す。

相談②: 過去に区切りをつける方法を教えてください。

ペンネーム:芯さん(20代、女性)
私は4月から大学3年生の21歳なのですが、高校時代に未だ強い未練があります。過去に心が取り残されたようで、今の自分と向き合って生きることができません。羽根田選手は未練や過去に囚われたことはありますか? どうしたら過去に区切りをつけられるか、どういう考え方をしたらいいか、などありましたら教えてくださると幸いです。

ひたすら自分と向き合えば、後悔しない選択肢がわかる

僕の場合、人生で後悔していることはひとつもありません。失敗や反省はたくさんありますが、それも含めて人生だと思います。

僕は人生の分かれ道に突き当たるたびに、ひたすら自分と向き合うことにしています。そうすれば、どれが後悔しない選択肢なのか、なんとなくわかるはずです。僕の場合は大体、「厳しい選択肢のほうが後悔しないだろうな」と考えてきました。

スロバキアへ渡るかどうかで迷ったときもそうです。日本の大学に行く可能性も踏まえて、いろんな大学について調べたり、問い合わせたりもしました。でも、スロバキア行きを避け、どうにか日本に留まる道はないかと模索している自分に対し、本心と向き合っていないような、居心地の悪さみたいなものがありました。

本心では、最初から僕が選ぶべき道はスロバキアなんだとわかっていたんです。もし、楽をしたいがために日本の大学へ進んでいたら、必ず後悔していたはずです。

過去の自分なんて、自分以外は誰も見ていない!

実際、スロバキアでの10年間は大変で、いろいろな問題に直面しました。ただ、その都度立ち止まったり、悩んだりしても何も解決しないので、とにかく前に進むしかありませんでした。結果、失敗はたくさんしましたが、その失敗を後悔はしていません

だから、芯さんも思い悩む必要はないと思いますよ。過去のことは綺麗サッパリ忘れちゃいましょう。過去の自分なんて、自分以外は誰も見ていませんから、明るい未来に向けて胸を張って生きていけばいいと思います

しかも、芯さんはまだまだ若いので、むしろ、まだ人生の年月があまり経っていないからこそ、後悔を抱えている年月の比重が重く感じてしまっているのかもしれません。今が20代なら、あと60〜70年は生きると思いますが、これからの人生のほうがずっと長いわけですから。

僕も今となっては高校時代の自分なんてどうでもいいと思っています。

人生はトライ&エラーの繰り返し。きっと今から巻き返せる

僕も、「小学生の頃からもっと今のように真面目に練習しておけばよかったな」と思うこともあります。僕は18歳まで日本で過ごしましたが、心の中では14歳ぐらいでスロバキアに行っておけばよかったなって考えたこともあります。

でも、そういう時代があったからこそ今の自分があると思うんです。小学生のときから今のような練習をしていたら、高校生になる頃にはバテていたかもしれないし、覚醒が遅かったからこそ、「遅れを取り戻してやろう!」と頑張ることができたんだと思います。14歳でスロバキアへ行っていたら、早いうちに燃え尽きてしまっていた可能性もあります。

だから、「あのときこうしていれば、きっと今の自分は……」なんてパラドックスは考えなくてもいいんです。巻き返せるものは、ちゃんと巻き返せます。人生はトライ&エラーの繰り返しですから、あまり過去に囚われる必要はないと思います。

相談③ :信じてきたことに向き合えなくなったとき、どうしていますか?

ペンネーム:ぽよたんさん(女性)
20代から土木工事の現場監督を続けてきました。悪天候でも休めない仕事、女性ながら男性社会の中で20年続いた事と、仕事には誇りを持っていたつもりでした。
最近、仕事を続けていく自信というか続けたいと思う気持ちがなくなってきました。
現在の勤め先は4年近く経ちますが、良き指導者がおらず、人に対して文句と受け止めてられるような発言を繰り返す上司…私にもその言葉は向けられます。心が折れてしまって、今は仕事が嫌いです。
外で疲れてまで、こんな嫌な気持ちになってまで、この先も現場監督を続けていきたくはない。それが今の自分の心の声です。何度も何度も自分の心に問いかけてみても、その言葉しか聞こえなくなり辛いです。
もし、自分が信じて続けてきたことに向き合えなくなったとき、羽根田選手ならどうしますか。よろしくお願いします。

選択肢がひとつに絞れたのは、とても幸せなこと

ぽよたんさんは「何度も何度も自分の心に問いかけている」ということですが、僕もまったく同じで、人生は自分の心に何度も何度も問いかけることが大事だと思っています。

ぽよたんさんは自分の心に問い続けた結果、選択肢がひとつに絞れたわけですから、こんな幸せなことはないと思います。これから先は1秒でも時間を無駄にしてほしくありませんし、素直に心の声に従って、新たな道を選ばれるといいのではないでしょうか。

僕の場合、「嫌な相手だな」と思った瞬間に解決策を見つけようとします。まずは自分と向き合って、我慢できるかどうかの答えを出して、今は我慢すべきと思えば我慢する道を選びます。でも、我慢できないと思ったら、環境を変えるべく動きます。

環境を変える or 原因を取り除く。問題解決に必要な2つの選択肢

もし自分に合わない指導者に当たってしまっても、自分で解決するしかありません。「嫌だな」と思いながらその環境に甘んじるなら、それは自分の責任です。イヤなら離れるか、それともそのコーチのもとで上手くやっていくためのアクションを起こすか、その二択しかありません。

スロバキアでもこういうことはたくさんありました。食事が口に合わない、言葉が通じない、日本人イビリされる……どれもイヤだったけど、「じゃあ僕は日本に帰りたいのか?」と心の天秤に掛けてみると、決してそうではない。であれば、ひとつずつ問題を解決するしかありません

ご飯は自分で作ればいいし、言葉はもっと一所懸命勉強すればいい。日本人イビリをしてくる連中にも、直接言いに行きました。結果、状況はずいぶん変わりましたよ。

答えが出たなら、次は環境を変えるためのアクションを!

僕は今のコーチと10年以上の付き合いになりますが、「もしかしたら、この人とは一緒にやらないほうが上手くいくんじゃないか」と考えた時期もありました。

そのときもやっぱり自分と真正面から向き合った結果、彼のもとで練習を続けたほうが自分のためになると思いましたし、今日でも上手くいっています。今にして思えば、彼のもとを離れようかと悩んだのはソリが合わなかったからではなく、自分の未熟さが原因だったのだと思います。

ただ、本当に「この人はいいコーチではない」と思えばその場で契約を終了し、次の日から新たなコーチを探していたと思います。

もちろん、ぽよたんさんと僕では環境が違いますが、選択しなければならないという点は一緒です。これだけ悩んだなら、答えは出ていると思います。これ以上、我慢ができなさそうであれば、次は環境を変えるための行動を起こすしかないんじゃないかと思います。

現在の勤め先では上手くいかないかもしれませんが、これまで20年間も活躍されてきたわけですから、環境を変えればきっとまた誇りを持って働けるのではないでしょうか。


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