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「どうすれば自分らしい文章が書ける?」という悩みにコピーライターの阿部広太郎さんが回答。個性は“仕事と向き合う姿勢”に宿る!<木曜日の相談室 vol.17>

株式会社マイナビ

目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」

第9回目のゲストは、コピーライターの阿部広太郎さん。「いま、わたしが相談したいこと」をテーマに相談を募集し、阿部さんに話をお聞きしました。

阿部広太郎さん プロフィール
2008年、慶應義塾大学経済学部を卒業。広告会社に入社後、人事局に配属されるも、クリエーティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。自らの仕事を「言葉の企画」と定義し、エンタメ領域からソーシャル領域まで越境しながら取り組んでいる。著書にnoteクリエイター支援プログラムをきっかけに刊行した『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』(ダイヤモンド社)、『待っていても、はじまらない。-潔く前に進め』(弘文堂)、『それ、勝手な決めつけかもよ? だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。「企画でメシを食っていく」主宰。
Twitter:@KotaroA
note:書籍「待っていても、はじまらない。―潔く前に進め」

相談①:「『私だからこそ』の文章を書く方法」

チッチさん(20代・女性)
阿部さん、こんにちは。ライターのチッチです。今、私は仕事をするうえで「うまく書くこと」を意識しすぎて、自分を置いてけぼりにしている感覚があります。もっと自分を滲ませて、「私だからこそ」書ける文章にするにはどうしたらよいのでしょうか。 ちなみに今私が仕事にしている媒体は「心が動いたこと」よりも「伝えるべき情報」が優先されます。そんななかでも、「私だからこそ」できる仕事にしたいのです。一緒に考えていただけるととても心強いです。よろしくお願いします。

「私だからこそ」という感覚は、仕事と向き合う姿勢に宿る

チッチさん、メッセージありがとうございます。今回のご相談をいただいたことで、僕も20代の頃に「文章中に自分らしさを出したい」と考えていたことを思い出しました。

僕の経験に照らし合わせた上で伝えたいのは、どんな案件を担当しても、そしてそれがどういう結末になるとしても、それはもう「自分の仕事」なんですよね。「私だからこそ」できたという境地に至るかはさておき、自分が携わった目の前の仕事というものは、「自分の仕事」になってしまう

例えば、ファッションには“晴れ着”や“勝負服”などもあれば、“普段着”というものもありますよね。派手な見た目なのか、日常に溶け込むものなのか。そのどちらにしても、大事なのは、なんとなく着ないこと。目を向けたいのは内面で、文章においても「私だからこそ」という感覚は、仕事に向き合う姿勢にこそ宿るのではないかと思っています。

「仕事をするうえで大事にしたいものはなんですか?」

仕事に向き合う姿勢というのは、例えば「原稿が仕上がるまで一言一句を悩み抜く」であったり、「最後まで情報収集をやめない」であったり。そういった自分ならではの働き方が「私だからこそ」という色を強くしていくのだと思います。

誰だって上手い文章が書きたいし、誰だってオシャレに見られたいという気持ちがあると思います。でも、上手い文章を書けるかどうか以前に、“仕事とどう向き合うか”の姿勢が問われるはずですし、今チッチさんが大事にするべきはその哲学や仕事論なのかな、と感じました。

もし僕がチッチさんと話せるなら、「チッチさんが原稿に向かううえで大事にしたいことはなんですか?」とお聞きしてみたいですね。かたい案件でも、何か1つユニークな言葉を入れたいなど、何でもいいんです。自分が大事にしたいと思っているものを、大切にしながら仕事に取り組めば、身近な人に原稿を読んでもらったとき、「あなたらしさが滲み出ているね」と感じてもらえるはずです。

20代の頃は、上手く書こうとすることさえ忘れていた

僕は20代の頃、「上手く書きたい!」と強く思いましたし、一方で「上手く書くって何だろう?」とも考えました。文章の上手さとは何か、それを判断する物差しができていないと上手く書けるようにはなりませんよね。だからこそ、名作といわれる広告に大量に触れましたし、その中でテクニックだけでなく、自分なりの仕事観を培いました

ただ、僕の場合は勉強しようという気持ちではなかったんです。「もっと知りたい」「こういう仕事ができるようになりたい」というワクワク感のほうが勝っていたように思います。グルメな人が「美味しいものを食べたい」と願うのと同じモチベーションですね。ただ、動機はどうあれ、いい仕事をするには心惹かれるものにたくさん触れたほうがいいと思います。

僕は寝食を忘れて仕事や公募にガッツリ取り組んでいた時期があったのですが、公募で初めて賞を獲ったときは、「ようやく見つけてもらえた」という実感を得ることができました。

今振り返れば、当時はとにかくたくさんのことに取り組んで、上手く書こうとすることさえ忘れていた気がします。結果的に、賞に選んでもらえたんです。そんな中で、ようやく「上手い」ってこういうことか、とふと気づくんですよね。

やまびこのように返ってくるリアクションを大切に受け止めよう

僕の文章が、いつ「私だからこそ」のものになったかはわかりません。でも、読んでくれた人たちから「良かったよ」「心に響いた」って言ってもらえるようになってから、「ああ、自分の文章の持ち味は熱さやリズム感なんだな」ということに気付きました。

いろんな発信をしていると、リアクションがやまびこのようになって返ってきます。そのリアクションが良いものでもイマイチなものでも、「あ、この文章が届くんだ」「こう書くと伝わるんだ」という発見になりますし、そこで得た感触は次につながっていきます。

チッチさんの仕事では「伝えるべき情報」が優先されるということですが、その「伝えるべき情報」の中にも、チッチさんの思いの断片や片鱗を込めることができると思うんですよね。難しいのかもと思いつつも、いや、できると思いたいです。それが読者に伝わることもあるでしょう。そこで返ってくるリアクションを大事にしながら進んでいってほしいなと思います。

繰り返しになります。「私だからこそ」の文章が書きたいという気持ち、すごくわかります。でも、文章のテクニックよりもまずは自分とは何か、自分が大事にしているものは何か、自分という存在がこの仕事をしているのはなぜか……こういった問いに向き合うことが案外近道な気がするんです。

遠回りに思えるかもしれませんが、自分が何者かということを自覚することで、自然と文章にもチッチさんらしさが滲み出てくると思っています。いつか、チッチさんの文章をどこかで読めることを楽しみにしていますね。

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