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人やものごとに興味が持てなくなってしまった。それどころじゃないときは、向き合わずに波をやり過ごす<木曜日の相談室vol.2>

目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。
そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」

vol.1に引き続き、「雑談のプロ」桜林直子さん(通称:サクちゃん)をゲストにお招きしました。
「ちょっとだけ聞いてほしい私のモヤモヤ」をテーマに、サクちゃんとのふたつめの雑談をお送りします。


はじめに

サク:こんにちは!マイナビさんの「木曜日の相談室」に応募してくださってありがとうございます。

コータ:こんにちは。よろしくおねがいします。

サク:応募の際にいただいたテーマをもとに雑談をする企画ですので、早速コータさんのテーマを読んでみますね。

テーマ
最近、人やものごとにあまり興味を持つことが出来ません。特に、新しい人と出逢う機会があっても、素敵だなと思う人や苦手な人に関わらずあまり人に興味を持てずうまく質問が出なかったり、今後に関係が続かない(続けたいと思わない)ことが多いです。また、新しい学びや価値観に出会っても、関わりたいという気持ちが募りません。人と会っても、寂しい気持ちになってしまいます。
2年前くらいまでの自分は、人や色んなものに興味があって、とにかく色んな人にあったりお話を聞いたりするのが楽しくて仕方なく、その熱意をもとに基本の行動を決めていました。これから今の自分でどう人と関わって良いか、生活を楽しんで良いのだろうかと途方に暮れることがあります。
今は、今まで築いてきた人間関係や、興味のあったものである程度は楽しく過ごしているのですが、25歳でこれでは今後、新しいものを受け入れられないようになってしまわないか不安です。
自分なりに何故だろうと考えると、自分にばかり注意を向けてしまっていることと、人が自分に興味を持つとは思えない。と無意識に考えているからかな、と思ったりもします。
25歳で特段やりたいことも、得意なことも持たないままアルバイトをしている自分に不安を感じているというのが一つの理由ではないかと考えていますが、それをどうしていいかも分からず、そもそも解決すべき話かも分からないので、ゆるく雑談出来たらとても嬉しいです。

サク:なるほど、興味や好奇心がなくなってきてしまったと。

コータ:そうなんです。何を見ても自分に関係あるっていう感覚にあんまりなれないというか。前はスティーブ・ジョブズの本に感動したりしたんですけど、今は誰かに憧れる気持ちもなくなった気がします。

サク:そっかー。興味を持てていたときのことは覚えてる?その頃は、どうしてできたんだと思う?

コータ:見えている世界が狭かったっていうのもあるし、なんとなく自分にいろんなことができるって思ってましたね。可能性があるって。

サク:ワクワクできたんだね。

コータ:そうですね。お店に行ったり、人の仕事の話を聞いたりしたときにも「自分だったらどうするだろう」って考えたりしていましたね。

サク:そうか、それがなくなっちゃうのはなかなかさみしいね。どういうときにワクワクできてないなって気がつく?

コータ:ネットで記事を読んだときとか、新しい人に出会ってその人の仕事の話聞いたりしたときに、「へえー、立派だなー」としか思わないみたいな。

サク:自分とは関係ないものとして見てるんだね。

コータ:はい、すごく冷めてる感じです。


熱血野郎だったのに、好奇心がなくなってしまった

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サク:もともと熱中することはない?

コータ:いや、わりとありましたね、かつては。バンドやってたりとか、NPOの活動もしてたし、どちらかというと熱血野郎みたいな感じでした。

サク:へえー。「過去は熱血野郎だったけど今はもうちがう、きっとこれからもちがうだろう」っていう感覚があるの?

コータ:そこまで割り切れないのもありますね。変わったのはたしかだけど、本当に?さみしいなーっていう思いがあります。

サク:そうよね、さみしいよね。

コータ:以前は、興味をもったらとりあえず踏み込んでみたんだけど、それを何度もやってみた結果、なんか、なんにでも興味をもったところで、人には向き不向きとか、合う合わないっていうのがあるんだなってわかってきたんですよ。

サク:そっかそっか。「興味を持ったけどちがった、失敗だった」と思うんだね。

コータ:そうですね。地方移住に興味を持って2ヶ月くらい住んでみたけど、あんまり楽しくなくて、間違えたなーとか。表層を見て、かっこいいなとかおもしろそうと思って飛び込んでみても、実際にやってみると、いやなことばかり目についちゃって楽しくなかったり、そういうのが何度もありましたね。

それで、他の新しいものが見えても、「今は興味をもっているけど、結局やってみたらまたガッカリするんじゃないかな」って思うようになったのかもしれないです。

サク:そうか、やってみたからこそわかるのは、いいと思うけどね。


嫌なことを見るのは、悪いことじゃない


コータ:なんか、自分って嫌なことや苦手なことが多いなって思っちゃいます。
友人と話してても、嫌なことばかり話しちゃって、自分で情けなくなってくるんですよね。

サク:わたしは、それ、宝の山だなって思うんだけど。なぜなら、わたしはいつも嫌なことや苦手なことを見つけてから、それをひっくり返して「じゃあどうしたいんだっけ?」って考えるやり方だから。

どういう状態が苦手なのか、嫌だって思った瞬間を、むしろチャンスだと思ってる。いやだっていう裏には「こうしたい」が必ずあるから、嫌だって思ったときは「ここになにかあるぞ」って。

そりゃ、「これがしたい」「これが好き」が先に湧いて出てくるほうがいいんだけどね。

コータ:ああ、はい。

サク:これはちがったな、嫌だなって思ったときに、「だから次もちがうかもしれない」って思っちゃうのかもしれないけど、それは「もしも」で、「これが嫌だった」っていうのは、かけがえのない事実なんだよね。「好き」は嘘をつけても、「嫌い」って嘘がつけない気がするし。

未来のことを心配して考えてもわからないから、「事実、嫌だった」っていう部分をもっとよく見たほうが、いいことが見つかるんじゃないかって思うんだよね。

コータ:それは、そうですね。

サク:自分の好奇心を信用できなくなっているのかもしれないね。どうせまたちがうかもなって。

コータ:ああ、そう思います。

サク:そっか、たしかにさみしいねそれは。それって、自分のことを信用してないってことだもんね。もともといろんなものに好奇心をもつ力があるのに、「出てきてもムダだよ」って自分で抑えてる感じだもんね。

コータ:そうですね。

サク:ネガティブな感情を「情けない」って否定したり、無視しちゃうのも、つながっているよね、きっと。

コータ:そうかもしれないです。


心が動かなくなった理由

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サク:コロナ禍でいろんな人と雑談していて思うことがあるんだけど、非常時の期間が長すぎて、もう慣れてきちゃって、「あれ、こっちが普通だっけ?」って、前はどうやっていたかわからなくなってる感じがあるよね。

「こうしたい」って思っても叶わないから、できなかったときに落差でがっかりしちゃうから、防衛本能で「何か思わないほうがいい」って、感情が動きにくくなってくるんだよ。それに慣れてしまうのは本当によくないよね。

コータ:そうですね。

サク:楽しいとかうれしいとかプラスの感情が極端になくなったら、感情って一個ずつで調整はできないから、悲しいとか怒りとか他の感情も同時に起こらなくなるんだよね。好奇心は、どんな感情でも心が動かないと始まらないから、今、好奇心がもてないっていうのはコロナ禍の影響もあるかもしれないね。

コータ:NPOで活動してたときは、社会への怒りとか疑問とかがあって、それが原動力だったんだけど、そういうのが薄くなってきたのは感じますね。

サク:そうだよね、それより明日の自分の心配ってなるとね。

コータ:はい。

サク:この期間が長すぎて、コロナのせいだって思えなくなって、「これが本当の自分」と感じちゃうんだろうね。

コータ:コロナ禍もそうだし、ぼく、体調が悪くなって入院とかしてて、それもあって思い通りにいかないことばかりで、何かを願うってことができなかったのもありますね。

サク:そうだったんだね。今は体調は大丈夫なの?

コータ:実は、この雑談を申し込んでから今日お話する当日までの間に、ガンが再発しているのがわかって、来週から入院するんですよ。治る見通しは高いんですけどね。

サク:そうなんだ、すごく大変だったね。それは当然自分に関心が向くし、他のことをシャットダウンするには十分な理由なんじゃないかな。むしろ、いっぺんに考えるのは無理だから、他のことは強制シャットダウンしたほうがいいとも言えるよね。

コータ:そうか。

サク:大きな問題を抱えているときに、何か考えようとすると、ばっくりした大きなものを見ちゃうと思うんだよね。でもほんとは一個ずつ、体のことは体のこと、心のことは心のこと、社会や環境のこと。自分で決められないことと、自分でどうにかできること。ほんとは別々なんだよね。

でも、そんな状況じゃごっちゃになるよねえ。

コータ:そうですねえ、好調なことがないので、世界も自分も。

サク:そしたら、何かを考えるとき、全部「人生」って思っちゃうよね。

コータ:はい。以前は人の偏愛の話を聞くのが好きだったりしたんですけど、今はできなくて。

サク:いや、そりゃそうだよー。

コータ:そうか、そうですよねー。


ずっと底じゃないと信じて、波をやり過ごす

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コータ:コロナのせいとか病気のせいだとしても、自分の好きなものや楽しいことがわからなくなると、なんだか拠り所がなくて。ずっとこのままだったらどうしようって思っちゃいます。

サク:そうか。コータさんは今25歳でしょ。

コータ:はい。

サク:ちょっと歳上のわたしからひとつ言えるとしたら、あのね、これからもコロコロ変わるよ。あとから振り返ったら、「あのときこういう時期だったな。なぜならこういうことがあったからな」って、波になってると思うよ。

波の底にいるときって「ずっとこうなんじゃないか」って思っちゃうよね。でも、ずっとそのままなんてことはないよ。楽しいときといやなときの波もそうだし、自分のことばかりの時期と他人に興味がある時期とか。繰り返すんだよね。

コータ:はい。

サク:だから、もともと好奇心がないわけじゃなくて、あるときのことも知ってたら、また出てくると思うよ。

コータ:ああ。

サク:今どうして出てこないかは、自分でじゅうぶんよくわかってるじゃん。理由がありすぎるよね。それをしょうがないって言ったら冷たいかもしれないけど、理由があるっていうのは希望だと思うんですよ。

コータ:そうですね、恵まれてるのにどうしてなんだろうとは思わないですね。

サク:だよね、できない理由がある。っていうかちょっと多すぎる。だけど「これから先もずっとこうなんだ」ではないよ。今それどころじゃないってだけだと思うよ。

コータ:そう考えると、自分はそういう奴になっちゃったんだって決めつけないほうがいいですね。

サク:うん。なんかさ、元も子もないけど、自分に向き合わなくてもいいって思うんだよね。それどころじゃないときは。

コータ:ああ、はい。

サク:無理して向き合って、早く答えを出そうとすると「どうせ自分はこうだし」って決めつけを急いでしまうんだよね。悪い状態のときに考えたらいい答えは出ないし。「自分はダメなんだな」ってところにたどり着くなら、答えを出さないほうがマシって思う。

だったら一旦ごまかして、せめて明日、1週間、3ヶ月、生き延びる感覚で、ちょっとでもマシな、ちょっとでも楽しく、ちょっと笑えるような時間を増やすことを頑張るほうがいい。それで、「ああ悪くないかも」って思えたときに、考えたほうがいいと思う。

コータ:うんうん。

サク:もちろん悩みによるけど、不良な答えだけど「向き合わないでいったんやりすごせ」ってのもひとつの手だよね。

コータ:いやー、そうですね。


自分だけの優先順位をつけて、自覚する

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サク:これは比べられることではないけど、わたしはシングルマザーだったから、いつもお金のことを優先しないといけなくて、「これが楽しい」とか「これをしたい」とか言ってる場合じゃなかったんだよね。それを続けていたら、出てこなくなってしまって、「わたしはやりたいことがないんだ」と思い込んでしまったの。

やりたいことがないなら、じゃあそこに何があったかっていうと、解決しないといけない問題があった。それがなくなって、平地に立ったときにはじめて「じゃあどうしようかな、どこ行こうかな」って思えたんだよね。

楽しいことや好きなことよりも優先順位が高いものがあっただけなのに「わたしって好きなものがないんだな」「やりたいことはない」って決めつけるのは早かったと思う。

そのときはわからなくて、後から振り返ってわかったことなんだけどね。

コータ:はい。

サク:だから、今は、他人と比べないほうがいいって思う。谷底にいながら平地の人を羨むと、自分を下げる見方にしかならないから。

コータ:そうですね。

サク:他人と比べずに、今の自分が一番やらなきゃいけないのはこれなんだよな、それは楽しくないけど、しょうがない、やるしかないなって、優先順位を自覚する。それを決めてから外を見ると、また違ったものが見えるかもしれない。

コータ:そうですよね、この相談文を書いたときと今とでも状況が変わってて、1週間でも見えるものが変わってるし。

サク:そうだよね。優先順位をつけてみたら、今は「楽しいこと」とか「未来のこと」が20位とかになっちゃったとしても、大丈夫、きっとまたあとで浮上してくるから。いっぺんに全部は無理だよ。1位に10個は入らないからさ。

コータ:そうですよね。

サク:感情優位の人はもっと感情で決めてもいいと思うけどね。感情がうごきにくいなら、今何を大事にしてるんだっけ?って考えて、ひとつひとつ自覚する必要があると思うんだよ。

コータ:優先順位のせいにできるのは、落ち着く気がしますね。

サク:紙に書き出してみるのも良いかもしれないね。

コータ:はい、書いてみます。やらなきゃいけないことや、困ってることを箇条書きにしたりとか。

サク:そうだね、何に困っていて、どうなったらうれしいのかは、自分自身で見つけてあげるしかないからね。嫌だと思う負の感情はよくないものだとか、話さない方がいいとか、そんなことないから、出てこないようにシャッターを閉めて抑えないでほしいな。

コータ:そうですね、そこから気づきたいです。イヤなこといっぱいあるんで。

サク:ほんとに。イヤなことばかりなら、せめて「本当はこうしたいんだ」ってのを見つけたいよね。すぐに叶わなくても、大事に大事にとっておいたらいいよ。長い目で見て。

コータ:はい、そうしてみます。ありがとうございます。

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