見出し画像

退職者と企業がつながることを当たり前に。ゴールは、今の社会の価値観を変えること

クリエイティブの力で企業と人とを結び付け、それぞれが成長する機会をつくりだすマイナビ社員を紹介する「『きっかけ』をデザインするひと」。第3回となる今回ご紹介するのは、アルムナイ(退職者)とつながるきっかけをつくる新サービス『YELLooop』を立ち上げた新領域開発室BusinessCreation部 部長の松井徹哉(まつい・てつや)です。

アルムナイとは、英語で「卒業生」「同窓生」という意味。人事用語としては、企業を退職した人を意味します。欧米の企業では、自社を退職した人を貴重な人材とみなし、退職後もつながりを持ち続けています。いずれ再雇用したり、社外のパートナーとして一緒に仕事をしてもらったりなど、“アルムナイ”の活用は一般的になっています。

ただ、日本ではまだそこまでアルムナイの活用は進んでいません。「人は欲しいけれど一度うちを辞めた人を雇うのは……」という抵抗感があったり、「古巣に戻るのはハードルが高い」と思う人もいたり。

そのような状況のなか、「アルムナイと企業がつながることで、新しい価値が生まれる」という想いのもとに開発されたのが『YELLoop』。「退職者」「OB・OG」などのアルムナイと企業をクローズドのSNSでつなぎ、新しい関係づくりを支援するためのコミュニティサービスです。開発の背景とサービスに対する熱い想いを開発担当者・松井に聞きました。

新領域開発室BusinessCreation部 部長 松井徹哉(まつい・てつや)
2013年中途入社。就職情報事業本部を経て、2016年より事業企画部門へ異動し、新卒採用領域サービスの開発に従事。2021年4月に同部門内に新規事業開発部署を立ち上げ、第1号案件として『YELLoop』の開発をスタート。2022年7月に単独事業室化し、『YELLoop』の成長とともに新たな事業開発もミッションとしている。

企業がアルムナイと気軽につながることのできる仕組みをつくりたい

僕はマイナビに入社して最初は新卒採用領域のサービス開発を行っていました。2019年に新卒領域と転職領域の事業企画部門が統合され、新規事業を立ち上げるというミッションが与えられたんです。

日本企業の人材領域では何が課題なんだろうと考えたとき、退職した人を取り巻く環境が、日本と海外とではずいぶん違うなと気づいたんですね。日本の社会には退職者とつながるという価値観があまり浸透していなかった。でも、僕自身、マイナビを辞めた人を頼ることもあるし、アルムナイ採用がもっと市民権を得ても良いんじゃないかと思いました。

就職したら最後までその会社に終身雇用されるというのは、古い考え方にもなってきていますし、転職が珍しくないという価値観を持った世代がいる時代に、「一度辞めたけれどまた戻る」という考え方がひとつの選択肢としてあってもいい。企業とアルムナイがそういう関係性を気軽につくれる仕組みがないな、と思って色々調べ始めたのが『YELLoop』立ち上げのきっかけです。

ただ、アルムナイを“採用”という側面だけで見ると、「一度辞めた人間を再雇用?」なんてステレオタイプな思い込みに縛られている領域かもしれません。でも、カムバック採用だけじゃないつながり方もある。ビジネスパートナーとして前職と接点を持ち、企業側もお願いしたい仕事を部分的に依頼すれば、たとえばフルタイムでは働けないという人の働き方の選択肢を広げることにもなります。

『YELLoop』を通じてアルムナイとの関わり方はいろいろあるよということをお伝えし、今までの価値観を変えていくことで、企業にとってもアルムナイにとっても新たなビジネスチャンスが広がるのではないかと思っています。

独自のSNSを開発したのは、「コミュニティ」という形にこだわりたいから

『YELLoop』のポイントは、アルムナイと企業の人事担当者や一般の社員がSNSでつながることです。今まで、企業の人事が退職した方をデータベースに蓄積しておいて、何かあったら声をかけるという、1対1のやり取りは存在していたと思います。

もっと新しい形でつながる仕組みをつくりたいと思って、『YELLoop』では“n対n”のコミュニケーションの場を設計することにしました。だからといって、既存のSNSのシステムを使うのはちょっと違って、僕としては、あらたなコミュニティという形にこだわりたいと思ったんです。

そのために、マイナビを辞めた元社員や、中途採用でマイナビに入った社員、アルムナイ採用を行っている企業など、さまざまな方にヒアリングしました。企業とつながるときに、プライベートのSNSアカウントを連携させることのメリットとデメリットはそれぞれあると思うんです。こういうコミュニティにプライベートの個人アカウントを使うのはちょっと気が引けるとか、企業側ではきちんとコミュニティを運営できるか不安だという意見もありました。

そういったヒアリングの結果を踏まえて、実際に独自のSNSをつくるのは大変でしたよ。いろいろなケースを想定して、運用方法を考えたり。こだわろうと思えばトコトンこだわれますが、予算と時間は限られています。

どこまでやるか線引きをするのも、結構悩みました。立ち上げ時、僕らは3人のチームだったので、ひとりあたりの作業量も多かったです。でも、新しいことをやるのは楽しいし、この領域の仕事って、将来的には市場で重宝される仕事になるはずだから、と言って声をかけあってみんなには頑張ってもらいました。

YELLoopのコミュニティホーム画面

想像をはるかに超える反響が嬉しい

サービスが始まったのが2022年の8月で、これまでに想像をはるかに超える反響をいただきました。問い合わせや資料請求も多いですし、展示会などに出ると多くのお客様がブースに来てくださっています。ご提案を差し上げると、僕らの考え方や『YELLoop』が目指す世界観にすごく共感していただいて、是非取り組みたいと感じてもらえているという感触は実感しています。

ただ、そういう価値観を人事の方と共有できても、最終的に導入が決まるまではハードルが高いんですね。実績としてはまだ世の中的にも少ないので、始めるにあたっての漠然とした不安とか、コミュニティの運営は大変なのではないか、などに加えて、考え方の違いや社風などもあって、導入決定の場で一点突破できないところもあると思っています。

でも、逆に言えばそれは僕たちの学びになります。企業はこれからどんどん変わっていきます。テレワークなんて考えもしなかった会社がほとんどだったのに、今では普通ですよね。何かきっかけがあればアルムナイに対する考え方もガラッと変わりますから、それが『YELLoop』のゆくゆくの期待値になるはずです。

企業は、退職者は出したくないというのが本音だと思います。せっかくお金をかけて採用して育成した人が辞めてしまったら損失はやはり大きいですから。でも、こういう時代ですから退職者を0にすることはできません。だとしたらちょっと考え方を変えて、辞めちゃったけど別の形で会社に貢献してもらうことができれば、損失は少し抑えられるかもしれない。一度自社に在籍した人は“人的資本”だという考え方もだいぶ浸透してきました

『YELLoop』は、今の社会の価値観を変えることを最終的なゴールにしています。もちろん、ひとりでも多くの人、ひとつでも多くの企業にサービスを使ってもらうことも大事ですが、自分たちが生きている時代のキャリア観に沿った社会にすることが、僕たちのやりがいにもなっています。それは、マイナビという会社が背負う、ある意味責任のような気がするんですよね。

マイナビは、新卒採用・中途採用支援をメインにビジネスを展開しています。ただ人材を企業に送り出すだけじゃなく、『YELLoop』によって別の選択肢を提示できるのは、会社としても事業の網羅性が高まるのではないかと思っています。

企業も働く人も、いろいろな選択肢があっていい

『YELLoop』はまだ新しいサービスですし、コミュニティをどう運営すれば良いかイメージが湧かないという企業の声も聞きます。例えば、新しい方が入ってこられたらまず自己紹介をしていただいて、プレスリリースをお知らせするとか、オンライン同窓会を開催してもらうなど、いろいろなコミュニケーション機能があります。

転職経験がある方には、こういうサービスがあるよということを、是非前職の企業に紹介していただきたいですね。希望を持って転職しても、実際に入ってみたらちょっと違ったなってこともあるじゃないですか。だったら、元居た会社に戻っても全然いいよと。それを選択肢のひとつとして持っていただけるといいなと思います。企業には、興味をもってもなかなか上の人を説得できないってこともあるんでしょうが、諦めないで僕たちに相談していただきたいですね。社会は必ず変わっていきますから

写真:小黒冴夏


この記事が参加している募集

企業のnote

with note pro

仕事について話そう

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!