
「行動を起こすのに決断は必要ない」子役から料理家へと転身した長谷川あかりさんの、夢を叶える「決断論」<木曜日の相談室 vol.38>
目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」。
今回のゲストは、料理研究家の長谷川あかりさん。「いま、私が相談したいこと」をテーマに相談を募集し、長谷川さんに話をお聞きしました。

長谷川あかりさん プロフィール
料理家・管理栄養士。1996年生まれ。埼玉県出身。10歳から芸能活動を始め、『天才てれびくんMAX』などに出演。2018年に結婚を機に芸能界を引退後、短大・大学へ進学し管理栄養士の資格を取得。2022年から本格的に料理家・管理栄養士として活動を開始し、現在は『キューピー3分クッキング』で講師を務め、料理本も多数出版するなど活躍中。
相談①「マルチタスクを確実にこなすには?」
ちひろさん(20代 女性)
一つの仕事に集中しすぎて周りが見えなくなることが多いです。同時に飲食業でもあるのでお客様はこれを求めているのかな?って頭がいっぱいになっちゃいます。その結果ミスが増えることも多々あります。広い視野で確実に仕事をしたいので、何かアドバイスをください!!
仕事の中で一番大変なのが「課題の設定」

ちひろさん、毎日のお仕事お疲れ様です。ちひろさんのご苦労は何となく想像できます。というのも、このご相談文を読む限りでは、私が仕事で一番大変だと感じている「課題の設定」を常に念頭に置いて仕事をしようとしているとお見受けできるからです。
少し話がそれるのですが、私は料理家として活動を開始する前、「自分にしかない強み」について真剣に考えました。というのも、世の中で活躍していらっしゃる料理家さんは、だいたい皆さん私より料理が上手で知識も豊富です。なので、私が料理家としてやっていくには、単純においしい料理レシピの提案をするだけでは皆さんに喜んでもらえるような価値を生み出せないと思ったんです。
そこで、私がフォーカスしたのが「課題解決ツールとしての料理」です。
先に料理を考えるのではなく、生活の中にある課題を先に設定して、その課題を解決してくれる料理を考えて提案する、という方法をとることにしたんです。
例えば、「20時半に仕事が終わって家に帰ってきたけれど、冷蔵庫にキャベツと鶏肉しかない」という30代女性をイメージします。そして、彼女の課題を「とても疲れているけれどコンビニや冷凍食品は食べ飽きてしまっている。なるべく体によさそうなものを食べたいし、せっかくつくるならインスタグラムに載せたくなるようなおしゃれな料理がいい」と設定します。
そこから、この課題を解決する手段として「キャベツと鶏肉だけで出汁を取らずに作ることができる、優しい味わいのおしゃれなスープ」という順でレシピを考えていく、という具合です。
この課題の解像度が高ければ高いほど、解答=料理に求められることが明確になり、おのずと具体的なレシピが生まれます。なので、私にとってはこの課題の設定がレシピを考案するうえで一番重要かつ大変なステップなんです。
まずは最低限のタスクの洗い出しを!

ちひろさんは、お仕事中に「お客様はこれを求めているのかな?って頭がいっぱいになっちゃいます」と仰っていますね。これはつまり、ちひろさんはお客様の求めていること=課題を想像しながら、同時進行で色んなタスクに対応していらっしゃるということだと思います。すごく難しいことを普段からされている……!すごいです!!でも、その影響でミスが増えることもあるとのこと。ミスが増えるとストレスになってしまうと思うので、改善できたらうれしいですよね。
例えば、まずはちひろさんのお仕事に求められている最低限のタスクを洗い出してみる、なんていうのはいかがでしょうか。そして、そこは必ずクリアできるようにしておく。そのうえでもし可能なタイミングがあれば、お客様のご要望をイメージして、プラスアルファでそれを満たせるようにトライしてみる。
こんな方法であれば余裕が生まれ、ミスも減ってくるのではないかなと思います。
お客様に満足してほしいという思いから、真剣にお仕事に向き合っているちひろさんの姿勢、とても素晴らしいと思います。
これから先、ちひろさんの仕事人生がもっと充実しますように。応援しています!
相談②「息子と上京し、好きなことで生きていきたい
もいさん(30代 女性)
はじめまして。私は北海道に住む37歳の主婦です。ひとり親で、小学5年生の息子がいます。
私の悩みは今後、どこに住み、何をして生きていくかということです。息子には将来バンドマンになりたいという夢があり、今はエレキギターを習っているのですが、近い将来、東京に住みたいと言っています。
私は文章を書くのが好きで、いつかはそれを仕事にできたらいいな、と思っています。今は地元で仕事をしているため、普段の暮らしを考えるとなかなかすぐには決断できず困っているのですが、長谷川さんは物事を決める大事な場面ではどんなことを決め手にして選びますか?
「決断してから動く」は順番が逆

私がよく思っているのが、人って行動を起こすのに決断が必要だと思いすぎている節がある、ということ。「決断してから動く」という順番は実は逆で、「動いているうちに決断せざるを得ない状況になっていく」の方が近いんじゃないかな。
私自身もそうです。「料理家になるぞー!」と決心して料理家になったわけではありません。そもそも料理家って、どうやってなればいいのか分からなかった。
有名な料理家さんの経歴を見ていても、皆さん「好きが高じて気づいたら料理家になっていた」という感じで、決まったルートがなかったんです。だから私も、自分独自のルートを開拓するしかなかった。
それにあたって、相談①でも触れたとおり、「自分にしかない強みってなんだろう」「自分が興味があることってなんだろう」ということについて深く考え、今のスタイルに行き着きました。そして、このスタイルで地道にXでレシピを発信しているうちに、ありがたいことに支持してくださる方が増えて、その結果、今こうして料理家として活動できています。
2人とも、まずは今の場所から発信してみて

なので、もいさんも今の段階で「上京するぞー!」と無理に急いで決心する必要はないんじゃないかなと思います。なぜなら、今の時代どんな場所に住んでいても、SNSでご自身の才能を発信する方法があるからです。
エレキギターを習っている息子さんの場合、例えばYouTubeやTikTokなどに演奏動画をアップしたり、Xでバンド仲間を募ったりすることもできるかもしれません。また、私が子役をやっていた頃とは違って、芸能人もお芝居や歌やダンスなどの芸事一本だけではなく、勉強や他の活動にも注力して、マルチな才能を身に着ける方向に変わってきています。
だから、息子さんもエレキギターはエレキギターでがんばりつつ、勉強や他に興味があることにも今のうちからしっかり取り組んだ方が、もし本当に将来バンドマンになるとしても、絶対にご自身のためになると思うのです。
そして、もいさんご自身も同じです。文章を書くことがお好きで、いつかそれを仕事にしたいという夢があるのであれば、今のうちからnoteやブログなどで発信してみるのも手かもしれません。小説やエッセイに限らず、例えば今住んでいらっしゃる場所を生かした発信――例えば地元の素敵なお店や、そのオーナーへのインタビュー記事なんかも素敵だと思います。
そうしているうちに読者が増え、「東京のいろんな出版社から企画化の話が来るようになった」「ライターとしての仕事が舞い込んできた」。
息子さんなら「東京の芸能事務所やレコード会社からスカウトされた」「オーディションに合格した」となったら、もはや上京せざるを得ないですよね。この段階まで来れば、後押しがある分そこまで迷わずに決断することができると思うのです。
文章を書くことが好き、というもいさんのご趣味も、息子さんの夢を応援してあげたいという姿勢も、とても素敵です。
お二人の夢が叶いますように、陰ながら応援しています。がんばってください!
