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「美大への進学を親に反対されています」。そんな高校生の悩みにワクワクさんが「大丈夫だよ」と答えるワケ<木曜日の相談室 vol.6>

目まぐるしく変化する毎日、慌ただしく駆け抜けた今週もあと少し。そんな木曜日の1日に、ほんの少しだけ気持ちが軽くなれるお部屋、「木曜日の相談室」

第5回目のゲストは、前回に続き「ワクワクさん」こと久保田雅人さん。今回は「わたしの学校生活での悩み」をテーマに相談を募集し、久保田さんにお話をお聞きしました。

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久保田雅人(くぼた まさと)
1961年東京生まれ。立正大学卒業。同大在学中に中学・高校の教員免許(社会科)を取得するが、役者の道に進む。1990年4月から、NHK教育テレビ(当時)の幼稚園・保育所向け造形番組「つくってあそぼ」に、「ワクワクさん」役として出演。「帽子に丸メガネ、工作上手なお兄さん」として全国の子どもたちの人気を集めている。

久保田さんに聞いてもらいたい、「わたしの学校生活での悩み」

ペンネーム:りんごさん(17歳)
美大に行きたいと思っているのですが、親に反対されています。小さい頃から絵を描くのが好きで、できれば一生の仕事にしたいのですが、親には理解してもらえません。反対を押し切ってでも自分の夢を叶えたいと思っていますが、親の言うことを聞いた方がいいんじゃないかと、ときどきすごく不安になります。背中を押してくれませんか?

教師という夢に反対した父親を説得した方法

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私もりんごさんと同じ境遇でした。うちの親父も私が日本史の教師になろうとするのを認めてくれなかったんだよね。高度経済成長期を戦い抜いた親だったから、息子にも政治経済学部や商業学部に入って、きちんとしたサラリーマンになってほしいと思ったんだろうなぁ。

でも、私は「それは絶対にイヤだ!」って言ったんだ。「大学でしっかり日本史の勉強をします。どうしても教師になりたいんです」って延々と説得してさ。口からでまかせや、思いつきだけで喋っている部分もあったけど、とにかく延々と夢を語ったんだよ

そしたら親父も「わかった。じゃあ大学に行かせてやる」って納得してくれたんだけど、「その代わり、1つでも単位を落としたら学費やその他、すべての支払いを停める」なんて言い出してさ。だから、大学在学中は受験勉強中よりも勉強したね(笑)

だからまずは、りんごさんも自分の言葉で親を説得してほしい。もしかしたら親御さんは、納得する代わりに厳しい条件を出してくるかもしれないけど、それを丸呑みするだけの覚悟を持ってくださいな。

私も親父の条件を飲みました。それなのに結局は「役者になる!」なんて言ったもんだから、「家から出ていけ!」って怒鳴られたけどね(笑)

子どもが本気で夢を語れば認める。それが親という生き物

子どもの将来を不安に思わない親なんていないんだよ。子どもには、ちゃんとした会社にお勤めしてほしいと願うものだから。でも、もし子どもが本気で夢を語るのであれば、認めざるを得ないとも思うんだよな

うちの次女は高校を卒業後、アパレル系の会社に勤めたんだけど、「退職して、税理士の資格を取りたい。だから専門学校に行かせてほしい」って言い出したことがあったんだよね。

私も最初はどうしようかなって悩んだんだけど、娘は「ふと転職を考えたときに、自分が何の資格も持っていないことにショックを受けた。だから、もう一回ちゃんと勉強したい」って延々と力説するわけ。

最後はもう認めるしかなかったね。その代わりに、「1年でも留年したら認めないぞ」って条件を出したよ。結局、私も親父と同じことを娘にしていたんだな(笑)。でも、そうしたらやっぱり娘もいい成績を取ってくるんだよね。なんせ国家試験だから、必死で勉強しないと受からないもんね。

美大を目指すなら、“変な人”になる覚悟が必要

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りんごさんはわかっていると思うけど、絵を描いて食べていくのは相当厳しいですよ。まず、美大も簡単には受かりません。私の周りにも美大出身の人がいっぱいいるけど、みんな浪人しているね。ストレートで入学した人は一人しか知らない。それくらい難しいんです。

このあいだ、仕事で芸大に行ってきたけど、やっぱり芸大ってのは“変な人”がいっぱいいるね。“個性的な人”を通り越しているというかさ。もちろん良い意味だよ(笑)

やっぱり、普通の人が考えるようなことをやっても、人々を感動させることはできないからね。アーティストと呼ばれる人たちは、やっぱりどこか“変な人”で、だからこそ普通の人が考えないことを思いつくんです。

『つくってあそぼ』の造形スタッフにも芸大の学生さんがいたんだけど、その子はとにかく妙な絵を描くんだよ。だけど、味がある。結局その子にはちゃんと画商が付いて、絵が売れるようになった。美大とか芸大を目指すなら、りんごさんも“変な人”になる覚悟が必要だと思うね。

ダメでも違う道がある。ただし、それは口にしないこと

私はワクワクさんの役をもらってから、他の声優や役者の仕事はすべて辞めて、当時所属していた事務所も辞めたんだ。ワクワクさん一本に賭けたかったんです。この役に惚れ込んじゃったんだよな。

でも、ワクワクさん一本に絞ってからが大変だった。あちこちに自分で売り込みをかけたりもしたしね。りんごさんは、そこまでの覚悟を持てるかな? 厳しいこと言うようだけど、りんごさんが目指す世界はそういうものなんです。

もちろん、まずはやってみないとわからないし、もしダメだったとしても、必ず違う道があると思う。でも、最初から「違う道もある」なんて考えていたら、親は認めてくれません。「ダメだったらこうするから」なんて逃げ道を残しても説得力がないし、「だったら最初からそうしなさいよ」って言われるのがオチでしょう。

企画のプレゼンと一緒だよね。「第一案がダメなら、第二案もあります」なんて言っても、聞いている人は納得してくれません。自信を持って「第一案が最高なんです!」って言うから説得力があるんです。

大丈夫。17歳の君には未来しかない

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親にプレゼンすることで、自分の中でも気持ちも整理ができると思う。本当に絵を描いて生きていこうと思えるのか、この機会に改めて考えてみてください。それで本当に自信が持てるなら、しっかりご両親に想いを伝えればいいよ。

私としては、りんごさんには頑張ってほしいな。美大に行ってみればいいと思う。美大にはいっぱい“変な人”がいるから、そこでいろんな人と出会えば自分の感性も磨けると思うし、きっとりんごさんが目指す絵画にも出会えると思う。

美大に入ってからも、いろんな選択肢があるでしょう。油絵、水彩画、鉛筆、クレヨン……今はパソコンで絵を描いたりもできるからね。いろんな絵を描いているうちに、例えばデザインの仕事に目覚めることだってあるかもしれない。

最後に改めて言うけど、自分の進路は最終的には自分の決断で決めてほしいな。そして、自分の言葉で両親と向き合ってください。自分の芸術に対する想いをしっかりと言葉にして、覚悟を決めましょう。

大丈夫だよ。17歳のりんごさんには未来しかないんだから。私なんてもう過去しかないけどね。わはははっ(笑)

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